IoTゲートウェイとは?役割や事例など押さえるべきポイントを徹底解説
あらゆるモノがインターネットとつながり、人々の生活は年々便利になっています。このような社会を支えているのがIoT(Internet of Things:モノのインターネット)です。
IoTゲートウェイとは、モノをインターネットにつなぐ橋渡しの役割を持つ通信デバイスです。
本記事では、IoTの活用に必要な『IoTゲートウェイ』について、その概要や役割を解説します。
目次[非表示]
- 1.IoTゲートウェイとは?
- 2.そもそも「ゲートウェイ」とは?
- 3.ゲートウェイと各種機器の役割と違い
- 4.IoTゲートウェイの役割
- 4.1.プロトコルが異なるデータの橋渡し
- 4.2.IoTデバイスの管理・情報処理・制御
- 5.IoTゲートウェイの接続方式と例
- 5.1.有線インターフェースの例
- 5.2.無線インターフェースの例
- 6.IoTゲートウェイ導入のメリット
- 6.1.遠隔監視による業務効率化、自動化/省人化
- 6.2.サービスの付加価値向上
- 6.3.生産性向上
- 6.4.予知保全
- 7.IoTゲートウェイの活用事例
- 7.1.製造業での導入事例
- 7.2.インフラ関連の導入事例
- 7.3.建設業での導入事例
- 7.4.サービス業での導入事例
- 8.今後重要となるエッジコンピューティング
- 8.1.データ通信量の削減とコスト低減
- 8.2.低レイテンシー
- 8.3.セキュリティの強化
- 9.まとめ
IoTゲートウェイとは?
IoTゲートウェイは、「Internet of Things」の名前通り、モノ(デバイス)をインターネットとつなぐためのゲートウェイを指します。IP(インターネットプロトコル)を話せないモノの信号や情報を、インターネットにつなげるためにIP変換する機能を持ちます。
IoTとはあらゆるモノをインターネットにつなげるという発想ですが、例えば、安価なデバイスそれぞれにIP通信機能を搭載しようとすると、莫大なコストがかかり、現実的ではありません。デバイスの機能は最小限とし、簡単な電気信号やプロトコルを、必要な場合・必要な情報だけIoTゲートウェイでIPに変換してインターネットへつなげるほうが効率的です。IoTデバイスコストを抑えつつ、インターネットにつなげることがIoTゲートウェイの最も重要な役割です。
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そもそも「ゲートウェイ」とは?
IoTゲートウェイの「ゲートウェイ」とは、元々はネットワーク用語です。
国際標準化機構ISOが定めたOSI(Open Systems Interconnection)参照モデルでは、ネットワークプロトコルを機能によって7つの階層に整理しています。
OSI基本参照モデル |
具体例 |
|
7層 |
アプリケーション層 |
HTTPS, SMTP, FTP, DNS など |
6層 |
プレゼンテーション層 |
|
5層 |
セッション層 |
SSL |
4層 |
トランスポート層 |
TCP |
3層 |
ネットワーク層 |
IP(Internet Protocol) |
2層 |
データリンク層 |
MACアドレス |
1層 |
物理層 |
LANケーブル(Cat6等),光ケーブル |
ネットワークプロトコルは、第1層の物理層から第7層のアプリケーション層までの取り決めによって正しく通信できるように設計されています。みなさんがインターネットを使うときに、Wi-Fiなのか光ファイバー通信なのかLTEなのか、媒体を意識しなくても同じように通信できるのは、このように層ごとの役割がきちんと分けられているからです。
ネットワーク間を接続するときに、第何層で接続するかによって、機器と役割が異なってきます。
ゲートウェイと各種機器の役割と違い
ネットワーク接続に必要な機器の役割を表にまとめると以下の通りです。
以下、各種機器の役割を紹介します
ネットワーク間接続機器 |
中継する層 |
機能と用途 |
---|---|---|
ゲートウェイ |
すべての層 |
異なるプロトコルのネットワークを接続する |
ルータ |
第3層(ネットワーク層) |
IPアドレスを判断して中継する |
ブリッジ |
第2層(データリンク層) |
MACアドレスを判断して中継する |
リピータ |
第1層(物理層) |
信号の増幅、通信距離の延長 |
表1.ネットワーク接続機器の役割
リピータの役割
リピータは、OSI基本参照モデルの第1層である物理層でネットワーク接続を行う機器です。
通信において、物理層ではネットワークケーブルの中を電気信号が伝わって行きますが、通信距離が延びるほど電気信号は減衰していきます。通信規格によってケーブル長は決まっているので、距離を延長したい場合は、信号を増幅して再送信する必要が出てきます。
リピータは、このように減衰した信号を増幅し、伝送距離を延長するために使用される機器です。
ブリッジの役割
電気信号を増幅するだけのリピータに対して、ブリッジは第2層であるデータリンク層でネットワーク間を接続する機器です。送信元や送信先の固有の値であるMACアドレスを見て、どこへ送信するべきかを判断して通信します。よく見かける「スイッチングハブ」はブリッジの一種です。
ルータの役割
ルータは、OSIモデルの第3層であるネットワーク層でネットワーク間を接続する機器です。インターネットプロトコル(IP)の場合、全ての通信にはIPアドレスが含まれています。ルータは第3層に含まれるIPアドレスを判断して、適切な経路を選択し、ネットワーク間をつなぎます。IPアドレスがない通信はルータでは処理できません。
ゲートウェイの役割
IP同士を接続するルータに対し、ゲートウェイは、異なるプロトコルのネットワークを接続する機器です。
今でこそIPが通信プロトコルの主流ですが、1970年代は各企業の独自仕様システムが多く、システム間接続にはプロトコルを相互変換できるコンピュータ(ゲートウェイ)が必要でした。
現在は、異なるプロトコルを変換して通信できるようにするための機器またはプログラムを「ゲートウェイ」と呼びます。「プロトコル」を言語とするならば、「通訳」の役割をするのがゲートウェイです。
IoTゲートウェイの役割
プロトコルが異なるデータの橋渡し
複数のIoTデバイスから集めたデータには、プロトコル形式が異なるケースも見られます。形式が異なると、ネットワーク間を正しく通信することができません。IoTゲートウェイはマルチプロトコル対応という技術的特徴があるため、異なる形式同士を橋渡ししてデータを集約できます。
IoTデバイスの管理・情報処理・制御
IoTデバイスとインターネットとをつなぐのはもちろん、その通信を監視して見守ることも役割の一つです。データ処理や制御を行い、配下にあるIoTデバイスの状態をモニタリングします。リアルタイム監視ができることで、故障や不具合を即座に検知したり、あるいはAIによって事前に予兆検知したりすることも可能になります。
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「【セキュリティ対策】IoTゲートウェイの重要性を解説」
IoTゲートウェイの接続方式と例
有線インターフェースの例
- USB
- Ethernet
- CAN
- RS-232C
- RS-485
- DI/DO
無線インターフェースの例
Wi-Fi
Bluetooth
5G/LTE
GNSS(GPS)
920MHz帯(サブギガ)通信、LPWA
データ収集したいデバイスの種類や通信プロトコルに応じて、適切なインターフェースを持つIoTゲートウェイを選択することが重要です。
また、IoTゲートウェイは、環境が整った室内のみの利用とは限りません。屋外の建設現場や、車載なども考えられます。機種を選択する際は、耐振動性能や電源電圧対応範囲、動作温度範囲などのスペックも重要となります。
IoTゲートウェイ導入のメリット
遠隔監視による業務効率化、自動化/省人化
設備や機械の遠隔監視は、IoTの最も基本的な用途です。
それまで人手で記録していた点検データや、取れていなかったデータを自動収集することで、点検監視業務を効率化できます。
また、今まで車で巡回しなければならなかったような複数拠点を統合監視すれば、その分の巡回点検工数を大幅に削減することができます。
サービスの付加価値向上
自社製品やサービスにIoT機能を付加すれば、お客様先の機器の稼働状況を把握することができるようになります。これにより、故障時の迅速な保守対応が可能となり、さらに適切な時期に摩耗部品や消耗品を供給するなど、お客様が必要な時にタイムリーにサービスを提供できるようになります。
生産性向上
監視データに異常を検知した場合、係員に自動通知するようにすれば、迅速な保守対応を実現できます。生産ラインを止める時間を少なくでき、生産性が向上します。
予知保全
監視データを蓄積していくと、故障や異常の兆候が分析できるようになります。例えば、AIを活用して大きな故障が起こる予兆を検知し、故障前に部品交換などの保全作業を行う「予知保全」です。IoTによって蓄積したデータは、AIを活用した予知保全には欠かせないものです
IoTゲートウェイの活用事例
IoTゲートウェイは、さまざまな業種/業界で活用されていますが、ここでは製造業、建設業、サービス業での導入事例をご紹介いたします。
製造業での導入事例
【掘削機】「古河ロックドリル株式会社」事例
【プラント設備】「日工株式会社」事例
【回転機】「株式会社酉島製作所」事例
インフラ関連の導入事例
【太陽光パネル監視】「株式会社サニックス」事例
【河川監視/防災】「株式会社YDKテクノロジーズ」事例
建設業での導入事例
【脱炭素】「戸田建設株式会社」事例
サービス業での導入事例
【介護見守り】「三菱電機インフォメーションシステムズ株式会社」事例
今後重要となるエッジコンピューティング
IoTが広まっている現在、ほとんどの処理をクラウド側に集約して効率化する「クラウドコンピューティング」とは逆に、デバイスに近いところでデータ処理を行う「エッジコンピューティング」に注目が集まっています。そしてIoTゲートウェイにもエッジコンピューティング性能が必要とされ始めています。
エッジコンピューティングのメリットは以下の通りです。
データ通信量の削減とコスト低減
エッジコンピューティングでは、デバイスから取得したデータを選別したり、加工したりしてネットワークに送信します。データ量が減るため、通信費用を削減できます。
また、サーバ側が受け取るデータ量も減るため、サーバ負荷の軽減にもつながります。
低レイテンシー
クラウドコンピューティングではクラウド側でデータ処理を行うため、処理結果をエッジ側に返すまでどうしても遅れ(レイテンシー)が発生します。
エッジコンピューティングではデータがエッジデバイスで処理されるため、ネットワークを介することなく迅速な応答が可能です。分かりやすい例としては自動運転が挙げられます。通行人の飛び出し検知には低レイテンシーが必要となります。
また、処理をローカルで行うため、ネットワークの混雑や遅延リスクの軽減にもつながります。クラウドサーバがダウンしても動作継続できるという冗長性が確保できるメリットもあります。
セキュリティの強化
データには、外部に漏洩してはならないものがあります。ローカルでデータ処理を行うことで、秘匿したいデータがオープンなインターネット環境に流れないような処理ができます。
コネクシオでは、高い拡張性を誇るエッジコンピューティングゲートウェイ『CONEXIOBlackBear(コネクシオブラックベア)』ならびに『Armadillo-IoTシリーズ』をご提供しています。
特に、処理性能と通信性能CONEXIOBlackBearとArmadillo-IoT G4はAIによるリアルタイム検知や予兆保全、画像認識なども行えます。クアッドコアCPU・NPUによる高い演算性能も魅力です。
まとめ
多くの企業が、「モノ売りからコト売りへ」を含むDXに取り組んでいます。
事例でご紹介した企業のように、IoTという手段を活用し、顧客体験価値・付加価値向上につながるサービス改革を進めると同時に、競合他社との差別化を図っています。
「お客様をより深く理解し、より近くに寄り添うこと」
そのための手段として、IoTは非常に有効です。あらゆるモノとインターネットがつながっていく時代の流れの中で、IoTゲートウェイの役割や重要性は大きくなっていくと考えます。
コネクシオでは、CONEXIOBlackBear、Armadillo-IoTをはじめとしたIoTゲートウェイ製品ラインアップを揃えるとともに、組み込みアプリケーションやクラウドアプリケーション開発、IoTに適した通信サービスTRIBE-bizなど、さまざまなソリューションをご提供しています。ご興味がございましたらぜひご相談ください。お客様の用途や目的に最適なIoTゲートウェイ製品とサービスをご提案させていただきます。