ローカル5Gとは?メリット・デメリットと活用方法

※2022年12月9日更新

2020年3月から、国内で次世代の通信規格“5G”が商用化されました。5Gとは、第5世代移動通信システムを意味します。

さらに、通信事業者が展開する5Gとは別に、企業や自治体などが独自に5Gネットワークを構築できる“ローカル5G”が登場しました。

ローカル5Gは、大容量の高速通信・超高信頼・超低遅延・多数同時接続が実現されるだけでなく、企業ニーズに応じて独自の通信環境を構築することも可能です。製造業のIoT化による変革やスマートファクトリーの実現を後押しする通信システムとして注目されています。

この記事では、ローカル5Gの概要をはじめ、メリット・デメリット、シーン別の活用法を解説します。


目次[非表示]

  1. ローカル5Gとは
    1. パブリック5Gとの違い
    2. プライベート5Gとの違い
  2. ローカル5Gのメリット
    1. ①Wi-Fiや4Gよりも優れた機能性
    2. ②外部に左右されない独自運用
    3. ③セキュリティ対策の強化
  3. ローカル5Gのデメリット
    1. ①コストが膨大
    2. ②周波数帯域幅が狭い
    3. ③障害物が多い環境には向かない
  4. ローカル5Gの活用法
    1. 【工場・プラント施設】スマートファクトリー化
    2. 【工場・プラント施設】工場設備の予知保全
    3. 【農業】作業の自動化・遠隔制御
    4. 【建設・工事現場】業務支援・ノウハウの継承
    5. 【商業施設】作業工数の削減
    6. 【スタジアム・イベント会場】安全性の確保
  5. ローカル5Gを導入するための準備
    1. 課題とソリューションの整理
    2. システム・設備の構築
    3. 無線局免許の申請
  6. まとめ

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製造業がローカル5Gを導入する際の3つの課題とメリット  」
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ローカル5Gとは

ローカル5Gとは、通信事業者が展開する5Gと切り離して、企業や自治体が独自の5G通信システムを構築して利用できる通信システムです。

ローカル5Gの導入により、建物・敷地内で必要な場所に、局所的に5Gネットワーク環境を整備できます。製造業をはじめ、建設現場や農業などさまざまな組織での活用が期待されています。


ローカル5Gとは

画像引用元:総務省『5G・ローカル5Gの普及・高度化に向けた取組


5Gネットワークは、従来の4Gネットワークをベースに、5G基地局と連携させるNSA(Non Stand Alone)構成で運用が始まりました。その後は、5Gのコアネットワークのみで動作するSA(Stand Alone)構成に移行していく想定です。

ローカル5Gの利用にあたっては、企業が無線局の免許を取得する、または免許を取得した事業者が提供するシステムを利用することが求められます。免許申請には、一定の様式が定められている証明書の提出が必要となり、処理期間は約1ヶ月半とされています。

総務省では、2019年12月24日よりローカル5Gの免許申請の受付を開始しており、すでに免許を取得している企業や教育機関もあります。

なお、ローカル5Gと混同しやすいネットワークにパブリック5Gとプライベート5Gがあります。


▼ローカル5Gとそのほかの通信システムとの違い


ローカル5G
パブリック5G
プライベート5G
設備
自営
移動体通信事業者
自営
通信エリア
利用者のエリア内
全国(通信事業者に依存する)
利用者のエリア内
免許
必要
不要
不要
周波数帯域
4.6-4.9GHz/28.2-29.1GHz
3.7/4.5/28GHz
4.6-4.9GHz/28.2-29.1GHz
無線区間伝達速度
20Gbps
20Gbps
20Gbps
遅延時間
1ms
1ms
1ms
通信安定性
導入コスト
高(数千万円~)
高(数千万円~)
セキュリティ
独立回線・SIM認証
公衆回線・SIM認証
SSID・パスワード


出典:総務省『5G・ローカル5Gの普及・高度化に向けた取組


パブリック5Gとの違い

パブリック5Gとは、ソフトバンク株式会社やKDDI株式会社、株式会社NTTドコモといった通信事業者が提供する5G(第5世代移動通信システム)のことです。2020年3月にサービスが開始されて、全都道府県での利用に向けてエリアの拡大が進められています。

ローカル5Gとの違いは使用できるエリアの範囲です。パブリック5Gは、整備が完了したエリアでしか使用できないのに対して、ローカル5Gはパブリック5Gがないエリアでも使用できます。


プライベート5Gとの違い

プライベート5Gとは、通信事業者が持つ周波数帯を用いて企業や自治体に5Gネットワークを提供するサービスです。企業独自の5Gネットワークを構築できるという点ではローカル5Gとの違いはありません。

ローカル5Gとの違いは免許取得が必要か否かという点です。プライベート5Gは通信事業者が環境構築・保守運用を行うため、企業や自治体の免許取得は不要ですが、ローカル5Gを使用する際は無線局の免許取得が必要です。



ローカル5Gのメリット

ローカル5Gを導入することで、製造業の現場にさまざまなメリットをもたらします。


①Wi-Fiや4Gよりも優れた機能性

ローカル5Gは、4Gと比べて通信速度が10倍以上、遅延は10分の1、同時接続台数は10倍と高速・大容量通信が可能です。工場内のあらゆる設備・機械に接続できるほか、通信品質・速度が向上するため、設備の遠隔監視や自動化もスムーズに行えます。

Wi-Fiと比べて広い範囲の通信をカバーできるため、企業が必要とする場所に独自にネットワークを構築できます。大規模な工場でも安定した通信が可能です。


▼5Gの優れた性能

超高速通信
(eMBB)
  • 現在の移動通信システムの100倍の速さ
  • 2時間の映画をダウンロードする場合、LTEでは5分かかるのに対して、5Gでは3秒で完了
超高信頼・超低遅延
(URLLC)
  • LTEの10倍の精度を誇る1ミリ秒程度の超低遅延
  • タイムラグがないため、遠隔地でもロボットの精密な操作が可能
多数同時接続
(mMTC)
  • 同時接続台数は1km2当たり100万台
  • 自宅で使用する場合、LTEでの同時接続はスマートフォンとパソコンの数台程度であるのに対して、5Gでは約100個の端末やセンサーを接続可能


②外部に左右されない独自運用

通信事業者が展開するパブリック5Gの場合、災害や通信障害が起きた際にネットワークにつながる設備・機器に支障をきたすおそれがあります。

ローカル5Gは、通信事業者が提供するネットワークと切り離して、独立したネットワークを利用するため、外部の影響を受けることはありません。

また、通信事業者の5Gエリアが届かない工場でも必要な場所に5G通信システムを構築できることもメリットの一つです。


③セキュリティ対策の強化

公共で利用されるパブリック5Gと異なり、ローカル5Gは外部のネットワークを遮断します。

社内でネットワークを占有することで外部へのデータ流出リスクを避けられます。必要なエリア・箇所以外に電波を届かないように構築することで、工場内のセキュリティ対策を強化することが可能です。

なお、5G/ローカル5G対応ゲートウェイ『CONEXIOBlackBear 5Gモデル』の詳細資料はこちらからお問い合わせください。

  【資料ダウンロード】5G版CONEXIOBlackBear紹介資料 | コネクシオ株式会社 コネクシオ株式会社|5G対応ゲートウェイ「CONEXIOBlackBear 5Gモデル」の資料をダウンロードいただけます。 コネクシオ IoT



ローカル5Gのデメリット

製造現場のパフォーマンス向上やセキュリティ対策に有効なローカル5Gですが、導入にあたってデメリットも存在します。


①コストが膨大

ローカル5G導入の障壁となるのがコストです。導入規模によりますが、5Gネットワークの構築に数千万~数億円のコストが発生するケースもあります。

また、ネットワークの構築費に加えて年額固定の電波利用料も支払わなければなりません。総務省が発表している電波利用料は以下のとおりです。


▼電波利用料

ローカル5G(28.2-29.1GHz)
1.基地局
2,600円/局
2.陸上移動局
370円/局(包括免許)
400 円/局(個別免許)
自営等BWA(Broadband Wireless Access)(2575-2595MHz)
1.基地局
19,000円/局
2.陸上移動局
370円/局(包括免許)
免許内容によって異なる(個別免許)

総務省『ローカル5G導入に関するガイドライン』を基に作成


ただし、ローカル5Gの導入にあたって必要となる設備に対して税額控除・特別償却などの措置が設けられています。さらに、今後は低価格化も見込まれているため、コストや将来的な利益などを考慮したうえで検討することが重要です。

出典:総務省『5G・ローカル5Gの普及・高度化に向けた取組』『ローカル5G導入に関するガイドライン


②周波数帯域幅が狭い

ローカル5Gの周波数は、28.2~29.1GHz帯の“ミリ波”と4.6~4.9Ghz帯の“Sub6(サブロク/サブシックス)”の2種類です。

最近の市場トレンドであるSub6は、周波数がLTEや無線LANと同じとなるため、周波数帯域幅が狭くなります。

そのため、容量の大きなデータの送受信や同時接続数が多い場合、通信・遅延速度の向上が期待できないおそれがあります。


③障害物が多い環境には向かない

ローカル5Gは、障害物がある環境では通信距離が限られてしまう可能性があります。

28.2-29.1GHz帯は、直進性の強い電波となり、障害物の影響を受けやすいことが特徴です。そのため、障害物の多い屋内外で利用する場合には、通信の距離が短くなる可能性に注意が必要です。



ローカル5Gの活用法

ローカル5Gは、幅広い分野での活用が期待されています。ここでは、どのように活用できるのか、利用シーン別で紹介します。


【工場・プラント施設】スマートファクトリー化

工場内にある設備・機械がローカル5Gにつながることで、設備のIoT化やAIの導入を後押しして、スマートファクトリーを実現できます。

製造機器の制御を自動化する、無線環境でリアルタイムな監視を行うなど、製造現場の作業を効率化して、生産性を高めることが可能です。


【工場・プラント施設】工場設備の予知保全

ローカル5Gによって工場内の点検・監視を遠隔地から実施できます。他拠点にある設備・機械に設置したカメラから高精細映像を5Gネットワークで受信して動作解析を行います。

24時間監視が可能になるほか、設備・機械の不具合や故障をいち早く検知できます。工場設備の予知保全によって安定した稼働の実現が可能です。


【農業】作業の自動化・遠隔制御

ローカル5Gは、後継者不足や労働力不足が問題視されている農業分野でも活用されています。

たとえば、トラクターやコンバインなどの農業機械に高精細カメラを取り付けて、ローカル5Gで遠隔拠点に映像を転送します。これにより、遠隔監視下で農業機械を無人状態で自動運転することが可能です。

現場作業の省人化・効率化につながり、生産効率の向上が期待できます。


【建設・工事現場】業務支援・ノウハウの継承

建設・工事現場では、人材不足だけでなく、若年労働者の確保と育成が大きな課題です。そこで、業務支援や習熟した労働者のノウハウ継承にも、ローカル5Gが活用できます。ローカル5Gを活用することで、ARグラス()を通した遠隔作業指示を行えます。

教える立場の労働者は、遠隔地にいるARグラス装着者(若年労働者)に対して、グラス上に作業指示を表示したり、写真・音声を共有したりできます。

一方、ARグラス装着者は、建物の完成形を現実の作業現場と重ねながら、ハンズフリーで確認することが可能です。

※ARグラスとは、グラス装着者の視線に合わせて、実世界に重なるように情報を表示させる器具のこと。


【商業施設】作業工数の削減

ローカル5Gは、商業施設内の店舗でも活用が想定されています。

たとえば、電子タグを利用した商品管理や、セルフレジ・無人レジにおけるカメラでの監視・映像解析などが可能です。それによって、在庫管理の工数を削減したり、高精度カメラで顧客行動をリアルタイムで分析したりして、コスト管理やマーケティングなどに役立てられます。


【スタジアム・イベント会場】安全性の確保

スタジアムやイベント会場などで、ローカル5Gを活用する方法もあります。

ローカル5Gを活用することで、大規模な会場内の様子を高解析度映像で確認できます。それによって、人の流れを把握しやすい、警備強化につながるといったメリットが挙げられます。

また、4K・8K映像やAR・VRなどを用いた臨場体験型サービスの提供も可能です。



ローカル5Gを導入するための準備

ローカル5Gの導入には、設備・システムの構築や免許申請などの準備が必要です。


課題とソリューションの整理

課題や将来像、ソリューションを洗い出して、関係性を整理します。

課題やソリューションを整理することで、どのようなシステム・設備の導入・構築を行うか、具体的に検討できます。


▼現状課題と解決策を整理する例

課題
製造現場の人員が不足している
将来像
一つひとつの現場業務を効率化して、生産性を向上したい
ソリューション
  • 産業用ロボットを導入して、組み立てや搬送作業の自動化を図る
  • センサーやカメラを利用して、遠隔地から点検業務を行う


情報を整理したあとは、ローカル5Gを活用してどのような流れで事業を行うのか、イメージ図を作成すると分かりやすくなります。


▼ローカル5G導入後のイメージ図の例

ローカル5G導入後のイメージ図の例

画像引用元:GO!5G『ローカル5G導入の手引き


出典:GO!5G『ローカル5G導入の手引き


システム・設備の構築

課題とソリューションの整理ができたら、ローカル5Gに対応した設備を導入してシステムを構築します。

システム・設備の構築にあたっては、現場の課題に応じて導入するシステムの要件を明確にすることが重要です。

自社のみならず、ローカル5Gの導入ベンダーやコンサルタントとともに具体的な内容を検討します。


▼システム・構成機器の要件

  • スループット(上り・下り)
  • 遅延時間
  • 通信可能範囲
  • 5G基地局・移動局・デバイス(PC、カメラ、センサーなど)の数
  • 利用する周波数帯


システムや構成機器の要件を決定したあとは、ネットワークの構成図を作成すると全体の関係性を把握しやすくなります。


▼ネットワーク構成図の例

ネットワーク構成図の例

画像引用元:GO!5G『ローカル5G導入の手引き


また、上記の構成図を作成したあとは、導入・運用にかかる費用や導入後の運用体制を決定しておくこともポイントです。

出典:GO!5G『ローカル5G導入の手引き


無線局免許の申請

ローカル5Gの導入には、無線局免許を申請・取得する必要があります。

無線局の申請を行う際は、無線局免許手続規則で定められた無線局事項書および工事設計書を提出します。また、自己土地利用の場合には、エリアの範囲を示す図や登記事項証明書の提出も求められます。

なお、免許の取得は、エリアを所有・利用している企業だけでなく、依頼するベンダー側が取得することも可能です。免許人は、免許の取得時の検査をはじめ、定期検査、電波利用料の支払いを行います。



まとめ

この記事では、ローカル5Gについて以下の内容を解説しました。


  • ローカル5Gの概要
  • パブリック5G・プライベート5Gとの違い
  • ローカル5Gのメリット・デメリット
  • ローカル5Gの活用法
  • 導入するための準備


企業内で独立したネットワークを構築できるローカル5Gは、大容量通信・超低遅延・多数同時接続といった特徴を備えた通信システムです。パブリック5Gや外部ネットワークから切り離すことで、5Gエリア外でもセキュアな通信環境を構築できます。

ローカル5Gを導入することで、産業関連施設のあらゆる設備・機械との通信が可能になるため、IoT化、スマートファクトリーの実現も後押しします。

ローカル5Gの導入にあたっては、事前に課題や将来像、ソリューションを洗い出して整理します。また、必要な設備・システム構築の計画を立てて、無線局免許の申請手続きを行うことが必要です。

コネクシオでは、ローカル5Gに対応したIoTゲートウェイ『CONEXIOBlackBear 5Gモデル』を核に、IoTシステムの導入をサポートしています。製造現場の生産性向上をはじめ、5Gを活用したスマートファクトリー化を目指す製造部門の管理者さまは、ぜひお気軽にご相談ください。

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