製造業のIoT化が注目される理由とは? 背景や導入のメリットを解説
近年、製造業の現場ではIoTを用いた革新が急速に進んでいます。
IoT(Internet of Things)はモノのインターネットと訳されるとおり、インターネットを介して人々の生活をより便利にしてくれる技術です。インターネットの普及とともに、著しく進化を遂げています。
本記事では、製造業のIoT化が注目されるようになった背景や導入のメリット、活用事例を紹介します。
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製造業のIoT化が注目される理由
IoTを用いた技術革新は、なぜ製造業で多く見られているのでしょうか。
その理由の一つに『Industry 4.0』という考え方があります。
Industry 4.0は、2011年からドイツ政府が提唱しているインターネットを活用した製造業に対する考え方のことで、第四次産業革命とも言われています。工場をスマート化することがIndustry 4.0の根幹。Industry 4.0では、モノだけでなく、業務やモノ同士が複合的につながることも含められており、デジタル化や自動化により生産性を向上させることが主な目的です。
同様の取組みは、アメリカの『Industrial Internet』や中国の『中国製造2025』など、世界各国、国家規模で動き出しています。日本でも目指すべき産業の在り方として、経済産業省が『Connected Industries』の概念を提唱しています。
IoTやAIを活用した製造業の革新は、人口減少が続いているなか、経済・社会の持続的な成長を求めるために不可欠なことです。
また、新型コロナウイルス感染症対策においてもIoTやAIは力を発揮しています。爆発的な感染拡大が見られた当時、多くの工場が営業の自粛を求められました。なかには生産調整や製造ラインの停止などによる売り上げ減少で、廃業を余儀なくされたケースもあります。製造業がコロナ禍で勝ち抜くためには、非接触で環境や設備・機器を制御できることが不可欠。社会全体の流れとともに、今後も加速的に進んでいくことが予想されます。
出典:経済産業省『Connected Industries』
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IoTを製造業に導入するメリット
ここからは、製造業がIoTを導入することで得られるメリットを、5つに分けて解説します。
データの可視化
IoTを導入すると、工場内の設備や機器、室内の温度・湿度など、さまざまなデータを可視化できます。データを可視化すると、次に何をすればよいのかが分かりやすくなります。また、温度や音などは人によって判断が異なる感覚です。こうしたデータが可視化されることで、どのような状況でも正確な判断を下せるようになります。
生産工程の可視化
IoTを導入すると、生産工程を可視化できます。今どのような段階なのか、IoTセンサーなどのデータを収集・分析すれば、リアルタイムの設備稼働状況が見えるようになり、生産力の偏りを低減することも可能になります。業務改善の足がかりにもなります。
予兆保全・予兆検知
IoTを用いることで、設備・機器のトラブルが起きる前に検知できます。生産ラインが突発的に停止するなど計画外のダウンタイムが発生すると、修理や部品交換、点検などの対応に追われるほか、その間は製品を製造することができません。収益を損失するばかりか、顧客の信用を失うリスクもあります。IoTセンサーなどで機器の状態や異常の予兆を察知すれば、適切なタイミングでメンテナンスを実施できます。効率よく保全を行え、トラブルの未然防止も可能です。ダウンタイムが削減すると結果的に稼働効率が向上し、収益の確保に役立ちます。
遠隔監視
IoTは、インターネットを通じて端末と通信するため、施設内だけでなく遠方の工場の設備や機器の遠隔監視を実現します。たとえば、日本にいながら海外工場の機器監視も可能です。インターネット環境さえあれば、いつでもどこからでも機器にアクセスすることができるため、出張などの負担も軽減できます。
また、高温・高湿といった人が常時監視することが難しいような状況での遠隔監視にも適しています。安全を確保しながら監視できるため、常に監視のクオリティを保持することが可能です。
コスト削減
IoTは、工場内のさまざまな状況をデジタル化するため、エネルギーや生産状況などの効率の悪い部分を洗い出せます。課題が分かれば、対応策を講じて業務プロセスを最適化できます。効率のよい稼働につながり、コスト削減を実現します。
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IoTを導入するときのポイント
自社の工場にIoTを導入するためには、以下の3つのポイントを押さえることが大切です。
詳しく見てみましょう。
現状を把握して課題を見極める
まずは現状を把握することが大切です。自社の置かれている状況を把握し、現状の課題を洗い出します。どのような点が妨げとなっているのか、改善する必要がある部分はないかなどを見極めましょう。
求める効果と費用をあらかじめ設定する
IoTによってどのような効果を求めているのかを明確にしましょう。IoTは、これまで人が行っていた業務を自動化して、業務効率や生産性を高めます。ただし、環境や課題によって必要なIoTは異なります。何を実現するためにどのような効果を得たいのか、目的を整理することが大切です。
また、導入の規模によって必要な費用は異なります。あらかじめ費用を設定し、そのなかでもっとも費用対効果の高い製品・サービスを選択しましょう。
活用できる仕組みを作る
工場の設備や機器をIoT化するためには、データを活用できる仕組みも不可欠です。IoT化した工場は、常にインターネットと接続された状態になるため、インターネットの知識は当然ながら、セキュリティの知識も必須と言えるでしょう。さらに、データを収集するIoT製品と、そのデータを分析し制御するためのシステムなども必要となります。ソフト・ハードの両面で活用できる仕組みづくりが大切です。
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製造業のIoT活用事例
この章では、IoTを活用し、価値を向上した製造業の事例を紹介します。
食品加工設備の開発・製造・販売を担うA社の事例
効率よく工場の設備を稼働させるためには、設備の故障や不具合などが起きることは避ける必要があります。製造業の現場では、こうしたトラブルが起きる前に修理やメンテナンスを行うことが大きな課題。生産ラインや設備の停止時間をできるだけ短くするだけでなく、最適なタイミングでケアすることが必要とされています。
A社では、自社が納入した設備に故障・不具合が発生した際のダウンタイムが課題となっていました。
この課題を解決するために、納品した設備にセンサーを取り付け、遠隔監視とモニタリングの実施に取り組みました。センサー・IoTゲートウェイ・ネットワーク・クラウドサービスなどまでトータルで導入し、設備をリアルタイムで把握できる仕組みを構築しました。
実証実験の結果により、製造・販売する設備にはあらかじめセンサーを取り付けてデータを解析し、予兆保全を提案するサービスの提供を計画されたとのことです。
設備を常に適した状態に保つというサービスで、製品と企業自身の価値向上を実現しました。
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まとめ
インターネットの普及とともに、進化を続けているIoT技術。近年では、新型コロナウイルス感染症の影響で、さまざまな分野でIoTの導入がさらに広がりを見せました。
なかでも、製造業のIoT化は、経済・社会の持続的な成長を求めるためにも不可欠。非接触でさまざまな設備や機器を制御できるため、コロナ禍で競合優位性を保つためにも必須と言えます。
IoTを導入する際は、導入することで何を得たいのか、どのような課題を解決したいのか明確にすることが大切です。また、導入後は自社で適切に活用していくためのトータルな仕組みづくりも必要と言えます。
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