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IoTに必須のIoTセンサの種類と特長、活用事例を解説
(2025/1/23改訂)
企業の生産性向上や保守管理の強化などに向けて、あらゆる分野でIoTの活用が進められています。IoT化の実現により、機器や設備などのモノから取得した情報を、ネットワークを介して可視化・活用できるようになります。
IoT化を進めるために必要なのが、さまざまなモノから情報を取得するための“IoTセンサ”です。この記事では、IoTに不可欠なセンサとは何か、代表的な種類や事例とともに解説します。
目次[非表示]
- 1.IoTセンサーとは
- 2.代表的なIoTセンサーの種類
- 2.1.人感センサー
- 2.2.開閉センサー
- 2.3.温度・湿度センサー
- 2.4.圧力センサー
- 2.5.照度センサー
- 2.6.CO2センサー
- 2.7.水位センサー
- 2.8.電流センサー
- 2.9.においセンサー
- 3.IoTセンサーを応用した事例
- 3.1.①河川の増水・氾濫の危険検知
- 3.2.②太陽光発電状況の遠隔監視
- 3.3.③オフィスのモニタリング
- 3.4.④ カーボンニュートラルへの取り組み
- 4.IoTセンサの選び方
- 4.1.IoT化の目的を明確にする
- 4.2.センサの測定頻度を検討する
- 4.3.回線と通信速度を確認する
- 4.4.センサの精度
- 5.まとめ
▼本ページで紹介した事例以外にも、センサーを用いた事例がございます
「IoTソリューション導入事例一覧」
IoTセンサーとは
IoTセンサーとは、センサーをネットワークに接続して情報を収集・管理する装置のことです。
機械の状態や人の動作、室内の明るさ、温度などの情報を感知して、収集した情報をさまざまなことに活用します。
▼IoTセンサーを活用してできること
- 遠隔地から設備の稼働状況をリアルタイムで監視する
- 遠隔地から温度・振動の点検を行う
- 温度・明るさを測定して、照明や冷暖房を自動調整する
- 生産ラインの稼働データを蓄積して、稼働効率を分析する
IoT化を実現するには、あらゆるモノから情報を取得して、蓄積・管理できる仕組みが必要です。
▼各種センサーを使った環境データの収集ソリューションはこちら
代表的なIoTセンサーの種類
代表的なIoTセンサーには、以下が挙げられます。
人感センサー
人感センサーとは、人や物の動きを検知する装置です。一般的に、周囲の温度変化を感知する赤外線センサーが用いられます。そのほか、可視光や超音波、静電気などを利用したセンサーもあります。
▼活用例
- 玄関の自動照明:防犯対策
- 自動ドア:電気代削減
- 自動水栓式の蛇口:衛生管理
人感センサーにより設備の動作を自動化することで、電気代の削減や衛生管理などに役立ちます。
開閉センサー
開閉センサーとは、ドアの開閉状態を検知するセンサーです。扉と壁に磁気が内蔵されたセンサーを対に設置して、マグネットの磁力によって開閉状況を判断する仕組みが一般的です。
▼活用例
- 自宅のドア・窓:防犯対策
- オフィス・会議室のドア:使用状況の確認
開閉センサーはドアの開閉状況をリアルタイムで可視化できるため、オフィスや製造現場での入退室管理や会議室の空室管理などに役立ちます。
温度・湿度センサー
温度・湿度センサーとは、空間の温度・湿度を検出するセンサーです。温度・湿度センサーは、一般的に以下の2種類に分けられます。
▼温度センサー
- 接触式:対象に触れて温度を測る
- 非接触式:赤外線から温度を測る
▼湿度センサー
- 伸縮式:人や動物の毛など、湿度で伸縮する性質を利用して計測する
- 電子式:吸湿・脱湿によって変化する感湿材料の抵抗値や静電容量を計測する
▼活用例
- 製造品・機械:品質管理
- ビニールハウス:植物の生育管理
- 倉庫内:危機管理
温度・湿度をリアルタイムに把握することで、機器やシステムの異常を検知して、トラブルの防止に役立てられます。
圧力センサー
圧力センサーとは、物体にかかる圧力を検出する際に用いられるセンサーです。気体・液体にかかる圧力を電気信号に変換して、どのくらいの圧力がかかっているかを数値化します。
▼活用例
- 工作機械:油圧管理
- 液体タンク・ガスタンク:残量管理
圧力センサーは、製造設備・機械などの圧力管理のほか、故障や不具合を防ぐための予知保全に役立ちます。
照度センサー
照度センサーとは、空間の明暗を検知するセンサーです。センサー内にある受光素子に入射した光を電流に変換することで明るさを検知します。
▼活用例
- ビニールハウス:植物の生育管理
- オフィス・工場:照明制御
照度センサーは、液晶テレビ・パネルのバックライトを検知して自動的に視認性を調整することも可能です。施設内の照明設備の自動調節や農作物の照度管理に役立ちます。
CO2センサー
CO2センサーとは、空間の二酸化炭素濃度を検出するセンサーです。CO2が赤外線を吸収する特性を活用して、吸収された赤外線の量からCO2濃度を検出する非分散型赤外線吸収法(NDIR方式)が主流となっています。
▼活用例
- 病院・商業施設:換気の監視
- ビニールハウス:植物の生育管理
CO2センサーは、社内・施設における健康管理や新型コロナウイルス感染症対策などに役立ちます。
水位センサー
水位センサーとは、河川や道路冠水、タンク内の水位を観測するIoTセンサーです。水面からセンサーまでの超音波や電波の伝搬時間を観測する方法のほか、水中に設置したセンサーにかかる水圧を測定して水位に変換する観測方法もあります。
▼活用例
- 河川・ダム:水位観測
- 排水タンク:自動排水
- 工場タンク:残量管理
水位センサーは、川の水位のリアルタイム観測だけでなく、河川氾濫の予測もできるため、防災や減災に役立ちます。
電流センサー
電流センサーとは、設備機器の電流値、消費電力などを計測するセンサーです。設備機器の回路に電流計を設置して電流を測定します。
▼活用例
- 配電盤:電力調整
- 機器:稼働監視
電流センサーは、設備機器の遠隔監視や予兆検知、エネルギーマネジメントに役立ちます。
においセンサー
においセンサーとは、目に見えない臭気の強さやにおいの変化を数値化するセンサーです。臭気センサーとも呼ばれます。
一般的には、におい分子が吸着したにおいセンサーの金属酸化物半導体の抵抗値が変化することにより臭気を数値化します。
▼活用例
- 製造品・機械:品質・製品管理
- 工場周辺:環境管理
においセンサーは、設備機器の予兆検知のほか、属人化の解消や技術の継承にも役立ちます。
これらのセンサーのほかにもさまざまなIoTセンサーがあります。検出対象や用途に合わせて、適切なセンサーを選ぶことが大切です。
IoTセンサーを応用した事例
IoTセンサーは、企業や自治体など、幅広いシーンで活用されています。ここでは一部の事例を紹介します。
①河川の増水・氾濫の危険検知
河川の水位状況を監視して、増水や氾濫などの危険を検知します。河川の各ポイントにIoT水位センサーを設置して水位を常時監視することで、水位上昇をすばやく検知できるようになります。
▼活用例
- 河川の増水状況を監視、防災情報の受信・配信
- 農業用水の水位・水量監視
IoT化による河川の増水・氾濫の危険検知については、こちらをご覧ください。
②太陽光発電状況の遠隔監視
太陽光発電の稼働状況を遠隔監視します。電流センサーを使用することで、太陽光の発電状況を遠隔地からリアルタイムで監視できます。
▼活用例
- 稼働状況の異常・故障の早期発見
- 売電の機会損失を防止
発電状況を常時監視することで、発電量の維持に役立つだけでなく、故障・汚染時の除去も容易になります。IoT化による太陽光発電状況の遠隔監視については、こちらをご覧ください。
③オフィスのモニタリング
オフィス内で人の出入りをモニタリングします。たとえば、人感センサー・開閉センサー・温度センサーの活用により、オフィス内をIoT化することが可能です。
▼活用例
- オフィスや工場内の出入り状況を監視して、セキュリティ管理を行う
- オフィスや駅構内のトイレをモニタリングして、動線の改善を行う
オフィス内の利用状況を可視化することで、効率的な運用や待ち時間の軽減につながります。
IoT化によるモニタリングに関する詳細については、こちらをご覧ください。
④ カーボンニュートラルへの取り組み
工場や建物からのCO2排出量を見える化し、建物のカーボンニュートラル化を支援するサービスを構築できます。
建物に取り付けたセンサで計測した電力量やガス消費量、太陽光発電量といったエネルギー情報をIoTゲートウェイ経由でクラウドに蓄積し、デジタルサイネージに表示してエコ意識を向上させるとともに、分析結果に基づいてさらなる省エネ施策を推進しています。
▼活用例
工場のエネルギー排出量の計測(電力消費量や排気温度、冷却水温度などを計測)
物流の最適化(例:配送車両の位置情報や運行状況をリアルタイムで把握し、最適ルートを選定することで、燃料消費を削減)
IoT化によるカーボンニュートラルへの取り組み事例について詳しく知りたい方は、こちらをご覧ください。
IoTセンサの選び方
IoT化の目的を明確にする
まずは目的を明確化し、IoTを用いてどんなデータを収集して、最終的に何を解決したいのかを決定しましょう。
目的がぶれないよう、関係者に客観的に説明できるようにしておくといいでしょう。
センサの測定頻度を検討する
IoTセンサには電池駆動の無線通信タイプが多くあります。このようなセンサは電源配線が不要なので、自由な場所に設置でき、設置工事不要で簡単というメリットがあります。しかし一方で、定期的に電池交換の手間が発生します。センサの種類によりますが、電池は標準的な使用法で、数ヶ月~10年以上もちます。
データ取得頻度は、電池交換頻度に大きな影響を及ぼします。データ取得間隔が秒・分単位なのか、時間単位なのかによって、電池交換頻度が大幅に変わり、運用に大きな影響を及ぼします。
例えば10倍の頻度でデータを取得すれば、電池も10倍の速度で消耗するため、電池交換作業工数もその回数分発生してしまいます。さらに、センサは大量に設置する場合が多いため、その個数分、電池交換作業が発生します。
また、データ取得間隔が短い場合、その分保存するデータ量も膨大となるので、データの保存コストや、分析に必要なコンピューティング能力も膨れ上がります。
コストやメンテナンスの手間も考慮して、測定頻度を検討しましょう。
回線と通信速度を確認する
IoTセンサの使用頻度や仕様が決まれば、それらのデータを収集するのに必要な回線や通信速度を確認します。
また、通信方式によっても通信可能な距離や導入にかかるコストが変わるので注意が必要です。
近年では消費電力の低さ、電池の持ち、世界標準での製品の多さ、価格の安さ、スマホと簡単に接続できるという観点からBluetoothセンサが幅広く使われています。ただし、Bluetoothセンサには長距離での通信が難しいなどの欠点もあるため、それをどう補うかを検討する必要があります。
省電力通信として注目されているのがLPWA(Low Power Wide Area)通信です。LPWAは省電力通信規格の総称であり、具体的にはLoraやEnOcean, 独自920MHz帯通信など、さまざまな通信規格が存在します。通信距離が数10m~数kmと、Bluetoothよりも長距離で使い勝手が向上しています。
必要な通信速度によってはゲートウェイなどの中継機器の仕様も変わるため、専門知識のある企業に相談しながら、目的に合わせてどの程度の仕様が必要かを決める必要があります。
▼省電力通信について解説した関連記事はこちら。
省電力通信の切り札:LTE Cat.M1とは?
センサの精度
センサにどの程度の精度が必要かを検討します。
センサには必ず、±数%程度の許容測定誤差があり、それらをどの程度許容できるかを判断する必要があります。精密な制御が必要であれば許容測定誤差の小さいセンサを選ぶ必要がありますが、その分コストが上がるため注意が必要です。
IoTセンサに、精密診断なみの精度を求めるのは現実的ではありません。IoTセンサの値は「簡易測定」と割り切り、何かアラートが上がってきたら現場で精密測定を行うという考え方もあります。
解消したい課題に対し、過剰仕様とならないよう目的に合ったセンサ精度の選定が重要です。
まとめ
IoTセンサーは、設備や機器などのモノの情報を取得して、ネットワーク経由で可視化・管理できる装置です。IoTセンサーの導入によって、さまざまなモノの計測が可能になり、装置の自動制御や予知保全などに役立てられます。
IoT化を進めるために、IoTセンサーの導入を検討している場合は、検出対象や目的に応じたものを探しましょう。
また、それぞれの企業に合ったオリジナルのIoTセンサーを受託製造できるケースもあります。自社でやりたいことが実現可能か、ベンダーに相談してみるとよいでしょう。
コネクシオでは、さまざまな計測対象に対応するIoTセンサーを取り扱っています。さらに、要望に応じたオリジナルセンサーの受託開発・製造も可能です。IoTセンサーの導入を検討中の方は、ぜひお問合せください。
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