
製造業の差別化はIoTサービタイゼーション|導入手順と効果
製造業の新たなビジネスモデルとして、"サービタイゼーション"が注目されています。製造業が新たな価値を創出し、消費者から選ばれる存在になるためには、このサービス化への転換が効果的な手段の一つとされています。
特にIoT技術の活用により、従来不可能だったリアルタイムデータ収集とサービス提供が実現可能になっており、製造業のデジタル変革を後押ししています。実際に、「IoTを活用したサービタイゼーションを具体的に知りたい」という企業様も多いのではないでしょうか。
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サービタイゼーションとは
サービタイゼーションとは、商品を製造・販売する"モノ売り"ではなく、サービスとして提供する"コト売り"によって売上につなげるビジネスモデルのことです。
モノ自体ではなく、そのモノから生み出される付加価値をデジタルサービスとして提供することで、売上や顧客満足度が向上すると期待されています。
製造業のサービス化事例
製造業においては、これまでモノを製造して販売するといった"モノ売り"が主流でした。サービス化に転換することで、ビジネスモデルが以下のように進化します。
土木建設機械メーカー様の事例
〈サービス化実現前〉
製造・販売する土木建設機械の特性上、稼働状態を把握することが難しく、販売後の客先との接点が定期メンテナンスや修理対応などに限定され、故障の原因特定などが困難な状態であった。
〈サービス化実現後〉
国内向けの製品に CONEXIOBlackBearを搭載して出荷する方針に変更。海外向けも、コネクシオと連携してデバイスの認証を取得している東南アジア諸国への出荷を開始した。突発的な故障時にも修理箇所を特定して現場へ駆け付け、迅速な修理対応が可能に。
今後は、収集したデータを活用し、故障前の数値変化を踏まえた予兆の把握や能動的なメンテナンス提案などにつなげることを視野に入れるなど、さらなる展開を計画しているとのことです。
医療機器メーカー様の事例
〈サービス化実現前〉
稼働状況を表す自動帳票データが翌日以降にしか確認できず、遠隔での閲覧ができなかった。また、専用ルーターのWi-Fi圏内しか対応しておらず、遠隔での閲覧が困難であった。
〈サービス化実現後〉
最短翌日にしか確認ができなかった装置の状態が常時確認ができるようになり、警報や、異常な数値を検知した際は担当者へ自動でメール、または電話で通知される事により、リアルタイムでの異常検知も可能となり、いち早く対応することができるようになった。
また、点検毎に手書きで作成していた保守点検報告書も、収集したデータを活用し遠隔地からいつでも出力ができるようになり、業務のDX化にも貢献した。
IoTがもたらすサービタイゼーションの革新
IoT技術は、製造業のサービス化を実現する上で不可欠な要素となっています。センサー技術、クラウドコンピューティング、データ分析の組み合わせにより、従来では困難だった製品の遠隔監視や予知保全が可能になりました。
具体的には、以下のような技術革新がサービス化を支えています:
- 5G通信:リアルタイムでの大容量データ伝送により、即座の状態把握が可能
- LPWA通信:低消費電力の無線通信により、多くのデバイスで広域監視が可能
- エッジコンピューティング:現場での高速データ処理により、遅延のない制御を実現
- AI・機械学習:蓄積されたデータから故障パターンを学習し、予測精度を向上
これらの技術により、製造業は単なる製品販売から、継続的なサービス提供へとビジネスモデルを転換できるようになったのです。
▼IoTの基本が3分で分かる解説記事はこちら
IoTとは?初心者でもわかる仕組み・活用事例・メリットと課題を徹底解説
IoTゲートウェイとは?役割や事例など押さえるべきポイントを徹底解説
製造業にサービタイゼーションが欠かせない理由
製造業において、なぜサービス化が有効な手段とされるのでしょうか。主な理由には、以下の3つが挙げられます。
①競合他社との差別化
製造業が競合他社との差別化を図るには、新たな価値創出が欠かせません。
現代では、工業化やグローバル化によってさまざまなモノがあふれ、市場における商品の汎用品化が進んでいます。さらに、アジア諸国に代表される製品開発・製造技術の躍進により、熟練技術を要せずに低コストで高度な製品をつくれるようになりました。
このような背景により、商品の品質向上・性能の均一化が進み、従来の製品性能だけでは差別化を図ることが困難になっています。
こうした環境下で売上を得るには、自社独自の付加価値サービスを創出することが重要です。製造業においては、IoTを活用した製品の保守管理サービス、定期メンテナンスサービスなどのサービス化に取り組むことで、競合他社との明確な差別化を実現できます。
②消費者ニーズへの対応
もう一つは、コト消費のニーズ拡大です。消費者行動はモノ消費からコト消費へとニーズが移り変わっています。
たとえば、バブル期では、消費者が"モノを所有すること"に価値を見出す傾向がありました。しかし、現代では、モノを所有する価値・ステータス性が薄れつつあり、"サービス(コト)を利用すること"に価値を見出す傾向が見られています。
顧客獲得には、顧客体験の向上や付加価値向上が重要です。デジタルサービスは、まさしくこの顧客体験や付加価値の向上において一翼を担うとされています。
③継続的な収益モデルの構築
従来の製品販売は一度限りの取引でしたが、サービス化により継続的な収益を確保できるようになります。月額料金制や従量課金制により、安定した収益基盤を築くことが可能です。
特にIoTを活用したサブスクリプションモデルでは、製品の稼働状況に応じた柔軟な料金設定により、顧客にとっても導入しやすいサービスを提供できます。
IoTを活用したサービタイゼーションの実現方法
製造業がサービス化を実現するには、顧客体験・付加価値向上につながるサービスを提供し、製品の販売後に顧客と継続的な関係性を維持する必要があります。
そのために有効なのがIoTの活用です。自社製品をIoT化することで、以下のようなスマート製造サービスを提供できるようになります。
IoTの活用で実現できるサービス例
予知保全サービス
- 自社製品ユーザーの利用データを収集・分析して、点検頻度・リソース割り当ての最適化サービスを提供
- 販売した製品の稼働状況を遠隔監視して、故障前の予兆を検知し事前メンテナンスを実施
運用最適化サービス
- 製品の使用パターンを分析し、効率的な運用方法を提案
- エネルギー消費量の最適化により、ランニングコスト削減をサポート
リアルタイム監視サービス
- 24時間365日の遠隔監視により、異常事態の即座の検知と対応
- ダッシュボードによる稼働状況の可視化で、経営判断をサポート
業界別IoT活用事例
【自動車業界】
テスラ社では、販売後の車両に対してOTA(Over The Air)アップデートを提供し、新機能の追加や性能向上を継続的に実施。単なる移動手段から、進化し続けるデジタルプラットフォームへと転換している。
参考記事: テスラだけじゃない、日本企業「データ活用の御三家」とは? IoT時代を制するメーカーの条件
【家電業界】
パナソニックでは、エアコンにIoTセンサーを搭載し、使用環境や利用パターンを学習。最適な温度制御により省エネを実現するとともに、メンテナンス時期の予測サービスを提供している。
参考記事: IoT住宅|Panasonic
【工作機械業界】
DMG森精機では、工作機械にIoTデバイスを標準搭載し、稼働データを収集。加工精度の向上提案や、刃具交換タイミングの最適化により、顧客の生産性向上をサポートしている。
【参考記事】 DMG森精機、制御システム向けIoTソリューションでMicrosoft Azureなどを活用
IoT導入時の技術選択とコスト考慮
サービス化を成功させるには、適切なIoT技術の選択が重要です。
主要な通信技術の特徴
●LTE/4G
- 都市部から郊外までの広域カバレージ、高速通信が可能、追加のインフラ整備が不要
- 導入コスト:デバイス1台あたり5,000円~数万円
- 適用場面:機器や車両の遠隔監視、ネットワークカメラなど
●LPWA(Low Power Wide Area)
- 消費電力が少なく、長期間の運用が可能
- 導入コスト:センサー1台あたり5,000円~15,000円
- 適用場面:屋外設備の監視、農業用センサーなど
●5G通信
- 高速・大容量通信により、リアルタイム制御が可能
- 導入コスト:デバイス1台あたり100,000円~250,000円
- 適用場面:自動運転、遠隔手術、工場の自動化など
●Wi-Fi 6
- 安定した通信品質と比較的低い導入コスト
- 導入コスト:デバイス1台あたり10,000円~30,000円
- 適用場面:工場内設備監視、オフィス機器管理など
※価格は目安です。機能や性能によって大きく変動します。
ROI(投資対効果)の考え方
IoTサービス化投資の回収期間は一般的に2~3年とされていますが、以下の要素により大きく変動します:
- 削減できる保守コスト:年間保守費用の30~50%削減が期待
- 故障による損失回避:予知保全により、計画外停止時間を70%削減
- 新規収益の創出:サービス料金により、従来売上の20~40%の追加収益
まとめ
サービタイゼーションとは、商品の販売ではなく、商品に付随するデジタルサービスを提供して売上につなげるビジネスモデルです。
製造業が市場における競争力を強化しながら、顧客を獲得していくためには、IoTを活用したサービス化への転換が必要といえます。ただし、サービス化の実現には、商品販売後にサービスを提供するための技術基盤とビジネスプロセスの構築が欠かせません。
IoTを活用すれば、商品のメンテナンスや製品の保守管理、さらには運用最適化まで、さまざまなスマート製造サービスを提供できるようになります。単なるモノだった商品・製品に継続的な付加価値を与えることで顧客体験の向上、ひいては安定的な売上向上につながります。
現代の製造業において、IoTとサービタイゼーションの組み合わせは、デジタル変革を実現し、持続的な成長を確保するための重要な戦略となっています。
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