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海外拠点IoT導入の課題と解決策|グローバル展開成功の実践ガイド

デジタル変革(DX)の推進とグローバル競争の激化により、海外拠点を持つ企業にとってIoT(モノのインターネット)の活用は重要な経営戦略となっています。しかし、国境を越えたIoT展開には、通信環境や法規制など多くの課題が存在します。

本記事では、グローバル企業が直面するIoT導入の課題と、それらを解決するための実践的なソリューションについて詳しく解説します。海外でのスマートデバイス展開を検討している企業の方は、ぜひ参考にしてください。

目次[非表示]

  1. 1.グローバル企業が直面するIoT課題の現状
    1. 1.1.世界的なIoTデバイス普及の加速
    2. 1.2.海外展開におけるIoT活用の重要性
  2. 2.海外IoT導入で直面する主要課題
    1. 2.1.通信インフラの課題
    2. 2.2.法規制・認証の課題
    3. 2.3.セキュリティ・運用面の課題
  3. 3.グローバルIoT展開を成功させる解決策
    1. 3.1.統合型IoT通信サービスの活用
  4. 4.業界別の成功事例と導入パターン
    1. 4.1.グローバル製造業における活用事例
    2. 4.2.機械メーカーにおける活用事例
  5. 5.導入ステップと成功のポイント
    1. 5.1.フェーズ別導入アプローチ
    2. 5.2.成功要因の分析
  6. 6.まとめ

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グローバル企業が直面するIoT課題の現状

世界的なIoTデバイス普及の加速

近年、ICT技術の革新とIoTセンサーの高度化を背景に、世界中でスマートデバイスの普及が急速に進んでいます。総務省の調査によると、2019年に230.7億台だった世界のIoTデバイス数は、2023年には378.0億台まで増加し、2027年には572.6億台に達すると予測されています。


世界のIoTデバイス数の推移及び予測

世界のIoTデバイス数の推移及び予測


▼分野・産業別のIoTデバイス数と成長率予測

分野・産業別の世界のIoTデバイス数及び成長率予測


画像引用元:総務省『情報通信白書令和6年版データ集


この成長の背景には、以下の要因があります:

  • 産業用IoTの拡大:製造業におけるスマートファクトリー化の進展
  • コンシューマー向けデバイスの多様化:スマートホーム機器の普及
  • 医療・ヘルスケア分野での活用:遠隔医療やウェアラブルデバイスの導入
  • 自動車・交通インフラの高度化:コネクテッドカーや交通管理システム

海外展開におけるIoT活用の重要性

グローバル展開を進める企業にとって、海外拠点とのリアルタイムなデータ連携は競争優位性を確保する上で不可欠です。IoTプラットフォームを活用することで、以下のメリットが期待できます:

グローバル製造業の場合

  • 海外工場の生産設備をリアルタイム監視
  • 品質管理データの統合分析
  • 予知保全による稼働率向上

製品輸出企業の場合

  • 自社製品の稼働状況一元監視
  • グローバル顧客の製品利用データの収集・分析
  • 予知保全やお客様の利用状況に合わせた消耗品提供などのサービス価値向上

物流業の場合

  • 国際輸送における貨物の位置情報管理
  • 温度・湿度などの輸送条件監視
  • サプライチェーン全体の可視化


    海外IoT導入で直面する主要課題

    海外でのIoTソリューション展開には、技術的・法的な多くの障壁が存在します。これらの課題を体系的に理解することが、成功への第一歩となります。

    通信インフラの課題

    ネットワーク接続環境の複雑性

    海外拠点でのIoTデータ連携を実現するには、安定したネットワーク環境の構築が必要です。現在、以下の接続方法が主に検討されています:


    1. 現地通信キャリアとの個別契約

    • メリット:現地の通信品質に最適化
    • デメリット:
        - 各国での契約交渉に時間とコストがかかる
        - 地域によってはカバレッジが不十分
        - 複数キャリアとの管理が煩雑​​​​​

    2. ローミングサービスの利用

    • メリット:既存契約の延長で利用可能
    • デメリット:
        - 通信コストが高額になりがち
        - データ転送量に制限がある場合が多い
        - 通信品質が不安定になるリスク

    エッジコンピューティング環境の整備

    IoTシステムの効率化のためには、データ処理を現地で行うエッジコンピューティングが重要となる場合があります。しかし、海外拠点では以下の課題があります:

    • 現地でのサーバー設置・保守体制の確保
    • データセンターの選定と信頼性の確保
    • 本社システムとの連携アーキテクチャの設計


    法規制・認証の課題

    各国の電波法・通信規制への対応

    IoTデバイスは無線通信を行うため、各国の電波法に準拠した認証取得が必要です。日本では技適マーク(技術基準適合証明)の取得が義務付けられていますが、海外では国ごとに異なる規制が存在します:

    ▼技適マーク

    技適マーク


    各国の主要な認証制度

    • 日本技術基準適合証明(技適)
    • アメリカ:FCC(連邦通信委員会)認証
    • ヨーロッパ:CE(Conformité Européenne)マーキング
    • 中国:CCC(中国強制認証)
    • 韓国:KC(Korea Certification)


    これらの認証を複数取得するには、多大な時間とコストが必要となり、特に中小企業にとっては大きな負担となります。

    データ保護規制の遵守

    GDPR(EU一般データ保護規則)をはじめとする各国のデータ保護法規への対応も重要な課題です:

    主要なデータ保護規制

    • EU:GDPR(一般データ保護規則)
    • アメリカ:州別のプライバシー法(CCPA等)
    • 中国:個人情報保護法
    • 日本:個人情報保護法

    これらの規制では、個人データの収集・処理・保存について厳格なルールが定められており、違反した場合は高額な制裁金が課せられる可能性があります。

    セキュリティ・運用面の課題

    サイバーセキュリティ対策

    海外展開時には、各国のサイバーセキュリティ環境の違いも考慮する必要があります:

    • 暗号化技術の規制(一部の国では暗号化に制限あり)
    • VPN接続の規制状況
    • 現地でのセキュリティ監視体制の確保

    運用・保守体制の構築

    • 現地での技術サポート体制の確保
    • 時差を考慮した24時間監視体制
    • 言語・文化の違いによるコミュニケーション課題

    【参考】総務省「技適マークのQ&A」「国民のためのサイバーセキュリティサイト

    グローバルIoT展開を成功させる解決策

    前述の課題を解決するため、統合型のIoTソリューションを活用することが効果的です。ここでは、具体的な解決策を詳しく解説します。

    統合型IoT通信サービスの活用

    ①グローバル対応IoT通信の選択肢

    海外でのIoT展開における通信課題を解決するには、以下のような統合型ソリューションの活用が効果的です。

    グローバルIoT通信サービスの必要機能

    1. 多国対応の通信インフラ
         - 各国の通信規制に応じた現地キャリアとの連携
         - 国や通信形態に依存しない柔軟なネットワーク構築
         - 世界各地での安定した通信品質の確保
    2. コスト効率の高い通信方式
         - 海外からのアクセス時の最適ルーティング
         - ローミング料金と比較したコスト優位性
         - データ使用量に応じた柔軟な料金体系
    3. 一元管理による運用効率化
         - 複数国での通信契約の統一管理
         - リアルタイムでの通信状況監視機能
         - 包括的なトラブルシューティング体制

    ②海外対応IoTゲートウェイ『CONEXIOBlackBear』の活用

    コネクシオが開発したIoTゲートウェイ『CONEXIOBlackBear』は、各国の法規制に対応しながら、統一されたIoTシステムの海外展開を可能にするゲートウェイソリューションです。

    また、グローバル対応IoT通信のSORACOMで動作確認済みであり、認定デバイスとなっています。

    技術的特徴

    1. モジュラー設計による柔軟性
         - 各国の電波法に準拠したLTEモジュールの挿抜式設計
         - 現地での認証済みモジュール調達が不要
    2. 共通プラットフォーム
         - ゲートウェイとOSが統一されているため、アプリケーション移植が不要
         - 開発・保守コストの大幅削減
    3. 法規制対応の簡素化
         - 海外拠点での適合認証や法規制制約を回避
         - 迅速なIoTデバイス展開が可能

    ③グローバルIoTシステム実装時の考慮事項

    セキュリティ強化

    • VPN接続による安全なデータ転送
    • 暗号化通信の実装
    • アクセス制御の設定

    運用効率化

    • 遠隔監視・制御機能の活用
    • 自動アップデート機能
    • 障害時の自動復旧機能

    業界別の成功事例と導入パターン

    グローバル製造業における活用事例

    スマートファクトリー化の推進

    • 世界各拠点の生産設備の統合監視
    • 品質データの統合分析
    • 予知保全による稼働率向上

    具体的な導入効果

    • 設備停止時間の大幅削減
    • 拠点ごとの品質のバラつき防止、不良率の低減
    • 保守コストの削減

    機械メーカーにおける活用事例

    出荷後の製品稼働状況の可視化

    • 自社の製品(機械、建機、産業装置など)に通信機能を組み込み
    • グローバルに輸出した製品のお客様先での稼働データ収集、位置情報リアルタイム追跡
    • 突発的な故障でも迅速な修理対応が可能に
    • 操作データの収集と分析による新たな提案が可能に
    • 高付加価値ライフサイクルサポートサービスの実現

    導入効果

    • サポートの迅速化、工数削減
    • メンテや消耗部品の適切なタイミングでの提案による収益向上
    • 顧客満足度向上
    • データに基づいた新たな付加価値サービスビジネスの確立

    ▼掘削機メーカーの海外展開事例はこちら

      IoT により販売機械の状態把握を実現 データを基にサポートの充実と新たな 事業展開を推進(古河ロックドリル様) 140年以上の歴史を持つ古河機械金属グループの削岩機事業を担う中核事業会社、古河ロックドリル。鉱山開発、土木、建設で活躍するブラストホールドリル、油圧ブレーカ、油圧圧砕機などの削岩機分野と、トンネル掘削機(ドリルジャンボなど)分野で100ヶ国以上へ輸出するグローバルのトップメーカーとして事業を展開しています。グループ全社でマーケティング経営を目指す中、同社はコネクシオIoTソリューションを活用した販売機械の状態把握と、そのデータを用いた新たなサブスクリプション型のサービス提供を推進しています。|遠隔監視|事例|IoT コネクシオ IoT



    導入ステップと成功のポイント

    フェーズ別導入アプローチ

    Phase 1: 概念実証(PoC)

    1. 限定的な範囲でのテスト導入
    2. 技術的課題の洗い出し
    3. ROI(投資収益率)の算出

    Phase 2: パイロット運用

    1. 複数拠点での本格運用
    2. 運用プロセスの標準化
    3. セキュリティ対策の強化

    Phase 3: 全社展開

    1. 全海外拠点への展開
    2. 継続的な改善活動
    3. 新技術の導入検討

    成功要因の分析

    技術面での成功要因

    1. 統合型ソリューションの選択
    2. 段階的な導入アプローチ
    3. 継続的な技術支援体制

    組織面での成功要因

    1. 経営層のコミットメント
    2. 現地スタッフとの連携
    3. 継続的な教育・研修

    まとめ

    海外拠点でのIoT導入は、グローバル競争を勝ち抜くための重要な戦略ですが、通信インフラ、法規制、セキュリティなど多様な課題が存在します。これらの課題を解決するには、統合型のIoTソリューションを活用し、段階的なアプローチで導入を進めることが重要です。

    本記事で紹介した主要なポイント

    • IoTデバイスの世界的な普及状況と海外展開の重要性
    • 通信インフラと法規制における具体的な課題
    • グローバル対応のIoT通信サービスとゲートウェイによる解決策
    • 業界別の成功事例と導入パターン

    コネクシオは、グローバルIoT通信サービスに対応済み、かつ各国の電波法に対応できるゲートウェイを提供しており、お客様の海外IoT展開を包括的にサポートしています。海外でのIoTプラットフォーム構築をご検討の際は、ぜひお気軽にご相談ください。

    デジタル変革の波に乗り遅れることなく、IoTを活用したグローバル展開で持続的な成長を実現していきましょう。


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    海外対応のゲートウェイ「CONEXIOBlackBear」について、詳しくはこちらをご確認ください。

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