製造業における人手不足の実態とは? 高齢化や技術継承への対策を解説
現在、製造業の人手不足が深刻化しており、技術者の高齢化や若者への技能継承に関する問題が出てきています。経済産業省の『製造業における人手不足の現状および外国人材の活用について』によれば、製造業の大企業180社・中小企業4,105社のうち9割以上が「人手不足が顕在化している」と回答しています。
経済成長の役割を担う製造業が自社の競争力の強化を図るには、経営を支えるための人材の確保が重要です。
この記事では、製造業における人手不足の実態をはじめ、高齢化や技術継承に関する課題への対策について解説します。
目次[非表示]
出典:経済産業省『製造業における人手不足の現状および外国人材の活用について』
▼関連記事
人材不足によりIoTが注目される理由はこちらでご紹介しています>>
製造業における人手不足の実態
経済産業省の『ものづくり人材の確保と育成』によると、製造業の就業者数と全産業に占める就業者の割合は以下のとおりです。
画像出典:経済産業省『ものづくり人材の確保と育成』
▼就業者数
2002年:1,202万人
2020年:1,045万人
▼全産業に占める製造業就業者の割合
2002年:19.0%
2020年:15.7%
製造業の就業者数は18年間で157万人減少しており、全産業に占める就業者数の割合についても3.3ポイント減少しています。
また、人手不足はものづくり人材でも深刻化しています。中小企業における製造業の従業員数過不足DI(※1)は以下のとおりです。
▼製造業の従業員数過不足DI(中小企業)
2020年第3四半期:+5.2
2021年第3四半期:-10.5
2020年から2021年にかけて、製造業の人手不足が深刻化していることが分かります。
※1…従業員数過不足DIとは、従業員の今期の状況について「過剰」と答えた企業の割合から「不足」と答えた企業の割合を引いた値
出典:経済産業省『ものづくり人材の確保と育成』/独立行政法人 中小企業基盤整備機構『第165回 中小企業景況調査』
製造業の人手不足が進む理由
製造業で人手不足が深刻化している理由として、以下の3点が挙げられます。
①人口の減少
日本における人口減少は、製造業の人手不足を招く一因になっています。内閣府の『令和3年版高齢社会白書』によると、2020年の国内総人口は1億2,571万人となっており、2008年の1億2,808万人をピークに減少の一途を辿っています。
15~64歳の生産年齢人口については、1995年の8,716万人をピークに減少を続けており、2020年には7,449万人と総人口の59.3%になりました。
国内全体の人口・生産年齢人口の減少によって、製造業でも人手不足が進んでいることが分かります。
出典:内閣府『令和3年版高齢社会白書』/総務省統計局『人口 人口減少社会、少子高齢化』
②高齢化の進行
国内総人口が減少するなか、65歳以上の人口は増加しており、高齢化が進んでいます。1950年には総人口に占める65歳以上の人口の割合は5%に満たないほどでしたが、2020年には28.8%まで増加。また、2065年には、国民の約2.6人に1人が65歳以上になると推計されています。
高齢化は製造業においても例外ではありません。就業者に占める65歳以上の割合は、2002~2020年の間で以下のように推移しています。
画像出典:経済産業省『ものづくり人材の確保と育成』
▼製造業の就業者に占める65歳以上の割合
2002年:4.7%
2020年:8.8%
65歳以上の就業者の割合は18年間で4.1ポイント増加しており、製造業の高齢化が進んでいることが分かります。高齢者層が退職することにより、製造業のさらなる人手不足につながっている状況です。
出典:内閣府『第1章 高齢化の状況』/経済産業省『ものづくり人材の確保と育成』
③若年就業者の減少
製造業における若年就業者数が減少していることも、人手不足を招く理由の一つです。製造業での34歳以下の若年就業者数は以下のように推移しています。
画像出典:経済産業省『ものづくり人材の確保と育成』
▼若年就業者(34歳以下)の推移
2002年:384万人
2020年:259万人
▼全産業に占める製造業の若年就業者の割合
2002年:31.4%
2020年:24.8%
若年就業者数は、2002~2020年の18年間で125万人減少。同様に、全産業に占める若年就業者の割合も6.6ポイント減少しています。
このように、製造業の若年就業者が減少し、将来を担う人材確保が進んでいない状況です。熟練技術者とされる高齢者層の退職後に向けて、在職中の若年就業者への技能継承も急務といえます。
出典:経済産業省『ものづくり人材の確保と育成』
▼関連記事
製造業の人手不足を解消するための対策
製造業の人手不足を解消するには、ITツール・IoT・AIといったデジタル技術の積極的な活用に加えて、シニア層や外国人労働者の雇用促進が必要です。
①スキルの“見える化”による若手技術者の育成
製造業における熟練技術者の大量退職を踏まえると、若手技術者の育成が欠かせません。しかし、人手による作業が中心の製造現場では、熟練技術者の経験に依存しやすく、業務が属人化してしまいやすいという課題があります。
若手技術者を育成していくには、生産工程にIoTやAIを活用し、熟練技術者が持つスキルを“見える化”することが重要です。熟練技術者の経験に頼っていた業務を標準化して、若手人材のスキル・技能習得に役立てられます。
②外国人労働者・シニア人材の雇用促進
高齢化や生産年齢人口の減少による人手不足を解消するために、外国人・シニア労働者を積極的に受け入れていくことも一つの方法です。
また、製造現場で経験を積んだシニア層を継続して雇用する選択肢もあります。外国人労働者の受け入れ体制の構築、継続雇用制度の導入など、柔軟な雇用制度を導入していくことが人手不足解消の一手となります。
③IoTやAI活用による生産工程の効率化
人手不足に対応するには、現場業務の省人化・自動化によって生産工程の効率化を図ることも重要です。
ITツール、IoTやAIなどのデジタル技術を活用することで、人手で行っていた業務負荷を軽減し、生産効率を高められます。
▼IoTやAIの活用例
- IoTカメラ・センサーで生産設備の監視や保守点検業務を省人化
- AIによる画像認識で目視による品質検査を自動化
- 生産ラインへのAIロボット導入で人手による業務を自動化
このように、現場業務を省人化・自動化することにより、限られた人材リソースを生産管理や品質改善などのコア業務に充てられるようになります。
▼関連資料
まとめ
製造業では、生産年齢人口の減少や高齢化によって人手不足の問題が深刻化しつつあります。若手就業者が少ないことに加えて、高齢者層の退職により熟練技術者のスキル・技術の継承が十分に行われていないことも課題です。
製造業の人手不足を解消するには、若手技術者の育成や外国人労働者やシニア層の雇用強化を図ることが重要です。また、IoT・AI技術を活用した生産工程の効率化も積極的に検討しましょう。
コネクシオでは、製造現場の人手不足解消に役立つ『Smart Ready IoTソリューションセット』を提供しています。人手による点検・監視業務の自動化をはじめ、予知保全による安定稼働、熟練技術者の技能・ノウハウの見える化による人材育成を実現します。
人手不足や技術継承の課題解決に向けて、IoTソリューションの導入を検討されてはいかがでしょうか。
▼コネクシオのIoT紹介はこちらから>>
▼関連記事
人材不足によりIoTが注目される理由はこちらでご紹介しています>>