IoTで実現するリモートメンテナンス
リモートメンテナンスとは、企業や工場などが持つ機器、設備、機械などを遠隔地から監視、管理、保守する仕組みです。企業がリモートメンテナンスを導入すれば、監視先への移動や人員確保のコストを掛けずに機器や設備などをメンテナンスできるだけでなく、異常を予知して故障する前に対策を講じることができるので作業やビジネスを止めずに済みます。
リモートメンテナンスには、ものをインターネットにつなぐ技術「IoT」が欠かせません。
リモートメンテナンスが企業にもたらすメリットを紹介したうえで、IoTがリモートワークにどのように関わっているのか解説します。
目次[非表示]
- 1.リモートメンテナンスとは
- 2.リモートメンテナンスのメリット
- 2.1.点検の省人化
- 2.2.トラブル対応の迅速化
- 2.3.広大・危険な場所の監視の効率化と安全性の確保
- 2.4.自社製造機器の新たな付加価値
- 3.IoTで実現するリモートメンテナンス
- 3.1.インターネットにつなげるだけ、ではない
- 3.2.デジタルデータ化がもたらすもの
- 4.IoTを活用したリモートメンテナンス事例
- 4.1.課題
- 4.2.コネクシオのソリューションで課題を解決
- 5.まとめ
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リモートメンテナンスとは
リモートメンテナンスとは、インターネットを通じて遠隔地にある機器、設備、機械やシステムの保守管理や故障時の調査を行う仕組みと取り組みを指します。リモートメンテナンスを導入すると、工場の設備や機器にトラブルが発生した際、「作業者が機器・設備のところに行く」という行程を省略し、オフィスにいながらにして、原因の調査や修理、メンテナンスを行うことが可能となります。
コロナ禍を契機として、より注目度が高まった働き方改革やDX(デジタルトランスフォーメーション)の推進に活用が期待されています。
センサー、ネットワーク、ソフトウェアが実現
メンテナンス作業者が現場に行かなくてもよい、という一点だけでも、リモートメンテナンスは通常のメンテナンスより格段に便利であるといえます。これを可能にしたのが、データ収集の為のセンサーとインターネットなどのネットワーク、そしてソフトウェアです。
メンテナンスの対象となる機器・設備に、電流センサーなど取得したいデータに応じたセンサーを取りつけることで、機器・設備の稼働状況や異常をデータ化することができます。センサーが作業者の代わりに機器・設備の稼働状況や異常をチェックしているわけです。
そしてセンサーが取得した稼働状況や異常のデータは、ネットワークを経由して、機器・設備がある場所から遠く離れたところにいる作業者のパソコンに送信されます。これで作業者は自分の事務所に居ながらにして遠隔地の機器・設備の様子を知ることができます。
さらに機器・設備に異常がみつかれば、作業者は専用のソフトウェアを使って保守を実施できます。プログラムの書き換えや修正であれば、やはりネットワーク経由で行うことができるのです。
ただし部品を交換するなどの物理的な作業が必要な場合は、作業者が現場に赴く必要があります。
遠隔監視により検知した異常や故障の保守・保全
機器・設備の稼働状況や異常に関する情報をデータ化できると、そのデータを分析することで、どのような状況のときに異常や故障が起きやすいかといった傾向をつかむことができます。
センサーが機器・設備の異常の兆候をとらえたときに警告するようにしておけば、異常や故障を予知できることになるので、その時点で部品交換などの修理を行うことができます。
これにより、TBM(Time Based Maintenance=時間基準保全)ではなくCBM(Condition Based Maintenance=状態基準保全)と呼ばれる手法を導入でき、早すぎる点検作業による無駄を省くことや、点検遅れによる故障を回避することが可能となります。
拡大するリモートメンテナンス
リモートメンテナンスは、これに用いるセンサーやネットワーク、ソフトウェアが進化したことで利用範囲が格段に広がっています。
工場の生産ライン、ビルの空調設備や照明設備、発電所の設備、病院の大規模医療機器、小売店の決済システムなどにリモートメンテナンスが導入され、コストダウンや生産性の向上といった成果をあげています。
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リモートメンテナンスのメリット
定期的なメンテナンスを必要とする機器や設備、機械を保有する企業にとって、リモートメンテナンスは非常に魅力的な選択肢になります。それは、少なくとも次の4つのメリットを企業にもたらすからです。
●点検の省人化
●トラブル対応の迅速化
●広大・危険な場所の監視の効率化と安全性の確保
●自社製造機器に新たな付加価値をもたらす
一つずつ確認していきます。
点検の省人化
点検作業の省人化は、リモートメンテナンスの最も顕著なメリットといえます。
従来型のメンテナンス、つまり非リモートのメンテナンスでは、メンテナンス作業者が機器・設備のある場所に赴かなければならず手間と時間がかかるばかりか、移動にも時間を要します。
例えば、非リモートのメンテナンスで一人の作業者が1日3カ所しか回れなかったところ、リモートメンテナンスを導入したことで1日10カ所の機器・設備をチェックできるようになれば生産性は3倍以上になります。
さらに、非リモートのメンテナンスでは、機器・設備が正常運転をしていも、作業者は定期的に見回らなければなりません。しかしリモートメンテナンスであれば、遠隔で機器の状態を監視し、異常の可能性を検知したときに対応するのみで済みます。
そしてリモートメンテナンスのなかには、異常が発生した場所を知らせる機能を持つものもあります。これなら作業者はすぐに修理に取りかかることができます。しかし非リモートのメンテナンスでは、作業者は原因究明から始めなければならず時間がかかります。
トラブル対応の迅速化
リモートメンテナンスでは、機器・設備のトラブルに対して迅速に対応することができます。ソフトウェアやアプリ上で閾値を設定しておけば、機器・設備に取りつけられたセンサーで収集したデータが規定値を超えた場合に通知されるため、異常の可能性を検知することができます。
非リモートのメンテナンスの場合は、機器・設備を利用している人が異常や故障をみつけてからメンテナンス作業者に連絡することになります。しかも異常を見つけた人は、どのような不具合が起きているのかを詳細に作業者に伝えなければならず、そのやり取りは煩雑になり、伝え漏れも発生します。
リモートメンテナンスなら、物理的な作業での修理が必要な場合でも、現場に駆けつける前に異常箇所を把握できるので、必要な部品を持って現場に行くことができます。しかし非リモートのメンテナンスでは、作業者が現場に行ってから必要な部品を確認することになるので、そのあとで部品を取りに戻らなければならず二度手間になります。
広大・危険な場所の監視の効率化と安全性の確保
例えば広大な土地に敷き詰められた太陽光発電のパネルであっても、リモートメンテナンスに対応していれば、異常が発生した時点でどのパネルにどのような不具合が起きたのかをメンテナンス作業者が把握でき、効率良く作業ができます。
また、高所・高温になる危険な場所や辺境地などに設置された機器・設備にリモートメンテナンスソリューションを導入しておけば、作業者が危険な場所に行く回数を減らすことができるので事故リスクが低下します。
自社製造機器の新たな付加価値
機器や設備のメーカーがリモートメンテナンスの仕組みを自社製品に搭載すれば、新たな付加価値をもたらすことができます。
メーカーは、顧客から問い合わせがあった時点でリモートで即時にデータを確認・原因の特定をすることが可能なため、メーカー・顧客側の双方にメリットがあります。
さらに、蓄積したデータを新製品開発のに活用することができ、より壊れにくい機器・設備をつくることができます。これは製品の市場競争力を向上させるでしょう。
IoTで実現するリモートメンテナンス
IoTはものをインターネットに接続する技術であり、パソコンやスマートフォンだけでなく、あらゆるものをインターネットにつなげる仕組みです。
インターネットは、ある地点で発信された情報を遠くの場所に伝えることができます。機器・設備につけたセンサーがデータを収集し、アプリケーション側での設定値を超えた場合は異常として検知、その情報をIoTを使って伝えることでリモートメンテナンスが可能になるわけです。
IoTはリモートメンテナンスの最重要ツールです。
インターネットにつなげるだけ、ではない
リモートメンテナンスにおけるIoTは、機器・設備をインターネットにつなげるだけ、ではありません。
例えば、スマホでWebサイトをみる、という行動であれば、スマホにインターネットをつなげるだけで、サーバー内にあるWebサイトの情報を閲覧することができます。しかしリモートメンテナンスのIoTはこれほど単純ではありません。
リモートメンテナンスではまず、機器・設備に稼働状況や異常を検知するセンサーを取りつけるなどの手段でデータの収集をする必要があります。センサーは機器・設備の動きをデータにします。そして機器・設備には、センサーがつくったデータをインターネットに送信する通信モジュールが必要になります。
さらにメンテナンス作業者側には、インターネット経由で送られてきた機器・設備の稼働状況のデータを受け取る中央監視システムや中央制御システムが必要になります。中央監視システムによって、1人の作業者が何十台もの機器・設備を一括して監視することができます。
中央監視システムで異常を検知したら、作業者はその場で遠隔地にある機器・設備を再起動させたり停止させたりすることができます。また軽微な異常や故障は、遠隔地から修理できる仕組みをつくっておくことで、作業者が現場を訪れる頻度をさらに少なくすることができるでしょう。
デジタルデータ化がもたらすもの
IoTにより、機器・設備のデジタル化と、機器・設備の稼働状況のデータ化が可能となります。
インターネットにつなげていない状態の、つまり非IoT状態の機器・設備はアナログの要素が色濃く残ってしまっています。
例えば機器・設備の回転数や温度、振動、音などは、そのままではアナログデータのため、収集することやコンピュータで分析することが難しいという欠点があります。
しかしIoTソリューションを活用することで機器・設備の回転数、温度、振動、音などをセンサーでデジタルデータにすることができ、収集することもコンピュータで分析することも容易になります。これにより、これまで目視で確認していた機器・設備の状態をデジタルデータに置き換え、正確な数値で状態を把握できるようになり、これまで機器・設備の状態はベテランの作業員でしか把握できなかったものが、IoTによって、新人でも数値をみれば異常を発見できるようになります。
IoTによるリモートメンテナンスの本質は機器・設備のデジタル化であり、メンテナンスの効率化はデジタル化がもたらす恩恵の一つにすぎない、と考えることもできるわけです。
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IoTを活用したリモートメンテナンス事例
IoTを活用したリモートメンテナンスは今や珍しいものではなく、すでにさまざまなビジネスシーンに投入されています。ここではその事例として、製造業企業Mipox社 の製造機械に、コネクシオのリモートメンテナンスを装着したケースを紹介します。
課題
Mipox社は自社の製造機械について次のような課題を抱えていました。
●ロールの回転ムラや平行ズレによって不良品が発生してしまう
●不良品が発生すると製造機械を止めてメンテナンスをしなければならず、ときに数日間製造ラインを止めることもある(数日間生産できなくなる)
●製造機械の不具合の原因には、ベアリングの摩耗やロールの劣化、軸の不具合などがあり、特定に時間がかかったり対策が多岐にわたったりする
製造機械を冗長化することで一部の課題は解決できそうでしたが、それには多額のコストがかかるため、採用できませんでした。それというのもこの製造機械は導入から10年以上が経過していて、いつ大規模修理が必要になる故障が発生してもおかしくなかったからです。しかし、寿命がくるまでこの製造機械を使い続けたいという希望を持っていました。
コネクシオのソリューションで課題を解決
コネクシオがMipox社に提案したソリューションは、IoTを活用したリモートメンテナンスでした。
まず製造機械に、モーターやロールの振動を測定するセンサーや、平行度センサー、回転センサーを取りつけます。これらのセンサーが集めたデータは、自動でCSV形式に変換され、IoTゲートウェイという機器でネットワークに送られます。ネットワークはデータを蓄積するサーバーにつながれ、データ分析できるようになりました。
メンテナンスを担当する作業者は、自分のデスクで、工場にある製造機器のセンサーから送られてくるデータを確認することができ、モーターやロールの動きをリアルタイムで監視できるようになりました。
さらに、異常が発生する前に異常の前兆をつかめるようになり、予知保全が可能になりました。これにより製造機械を止める時間は大幅に短縮されました。
さらにセンサーが複数取りつけてあるので、不具合が発生した部品を瞬時に特定できるので、調整や修理にかける時間も短くなりました。そして不良品の発生率が低下し、Mipox社は製品の品質を高めることにも成功しました。
まとめ
企業が機器・設備にリモートメンテナンスを搭載するにはコストがかかりますが、点検の省人化やトラブル対応の迅速化、メンテナンスの効率化と安全性の確保などのメリットによって、そのコストは短期間で回収できるでしょう。
機器や設備、機械を多く持っている企業ほど、そして機器や設備、機械が経営の重要な柱になっている企業ほど、リモートメンテナンスを導入する意義がある、といえます。
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