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Armadillo-IoT A9Eによる次世代IoTゲートウェイの可能性 〜従来機からの置き換えと拡張性の技術的ポイント〜

アットマークテクノ社が提供する「Armadillo-IoT A9E」は、従来モデル「Armadillo-IoT G3L」の後継機として登場した次世代IoTゲートウェイです。高性能・省電力・セキュリティ強化を実現し、クラウド連携や長期運用に最適化された設計が特徴です。
本記事では、G3LとA9Eの違いを技術的な観点から比較し、置き換え時の注意点やA9Eの拡張性について解説していきます。

目次[非表示]

  1. 1.ArmadilloーIoT G3LとA9Eの特徴や違いの比較
  2. 2.G3LからA9Eへの置き換え時の技術的ポイント
    1. 2.1.OSの違いとアプリケーション移植
    2. 2.2.通信方式の再設計
    3. 2.3.インターフェースの拡張性
    4. 2.4.セキュリティ機能の強化
    5. 2.5.省電力・間欠動作対応
    6. 2.6.設置性と筐体設計
  3. 3.ArmadilloーIoT A9Eの機能拡張について
    1. 3.1.ArmadilloーIoT A9E拡張性の強み
    2. 3.2.G3LからA9Eへの置き換え時の注意点
  4. 4.Armadillo-IoT A9Eの拡張基盤設計について
    1. 4.1.拡張インターフェース(CON10)
    2. 4.2.アンテナ設計(ANT1/ANT2)
    3. 4.3.電源設計
    4. 4.4.筐体との整合性
    5. 4.5.回路設計のポイント
  5. 5.まとめ

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ArmadilloーIoT G3LとA9Eの特徴や違いの比較

両モデルは産業用途に特化したIoTゲートウェイですが、設計思想に明確な違いがあります。
以下の表に、主な特徴や違いをまとめます。

項目

ArmadilloーIoT G3L

ArmadilloーIoT A9E

CPU

Arm Cortex-A7(996MHz)×2

Arm Cortex-A35(800MHz)×2
+ Cortex-M33(216MHz)

SoC

NXP i.MX 7Dual

NXP i.MX 8ULP

メモリ

512MB / 1GB DDR3L

1GB LPDDR4

ストレージ

4GB eMMC

4GB eMMC

OS

Debian GNU/Linux

Armadillo Base OS(Yoctoベース)

無線通信

LTE Cat.1, Wi-Fi(802.11a/b/g/n),

Bluetooth

LTE Cat.1 bis, Wi-Fi, Bluetooth

インターフェース

USB, RS422/485, microSD, GPIO, UART, I²C

USB, RS485, microSD, GPIO, UART, I²C, SPI, CAN, PWM, DI/DO

消費電力

約2.0〜3.7W

省電力設計(スリープ・間欠動作対応)

セキュリティ

一般的なLinuxセキュリティ

セキュアエレメント(SE050)搭載、JC-STAR適合

サイズ

約140×60×31mm

DINレール対応の小型筐体

用途

エッジコンピューティング、クラウド連携

高セキュリティ・省電力IoT、長期運用向け

Armadillo-IoT A9Eの強みは、処理性能が約3倍向上し、セキュリティ機能や省電力設計が強化されている点です。特に、IoT機器の長期運用やクラウド連携を前提とした設計が特徴です。

Armadillo-IoT A9Eの製品ページはコチラ

G3LからA9Eへの置き換え時の技術的ポイント

Armadillo-IoT G3LからArmadillo-IoT A9Eへの置き換えを検討する際の、技術的なポイントと注意事項を以下にまとめます。

OSの違いとアプリケーション移植

Armadillo-IoT G3LはDebianベース、Armadillo-IoT A9EはYoctoベースの「Armadillo Base OS(ABOS)」を採用。開発環境やパッケージ管理が異なるため、既存アプリケーションの移植には以下の点に注意が必要です:
・ライブラリの互換性確認
・コンテナベースの開発スタイルへの対応
・セキュアブートやTEE(Trusted Execution Environment)への理解


通信方式の再設計

RS485/Modbus:両機種対応だが、ポート数や設定方法が異なる
TCP/IP:基本的に同様だが、ネットワーク設定ツール(nmcliなど)の違いに注意

インターフェースの拡張性

Armadillo-IoT A9Eでは、SPI、CAN、PWM、DI/DOなどが標準搭載されており、FA機器やセンサ制御に柔軟に対応可能。これにより、GPIO制御やドライバ設計の見直しが必要になる場合があります。

セキュリティ機能の強化

Armadillo-IoT A9Eは、NXP製セキュアエレメント「SE050」を搭載し、暗号鍵の安全な保管や認証通信が可能。
JC-STAR制度にも適合しており、公共インフラやスマートファクトリーなど、セキュリティ要件が高い分野に最適です。

省電力・間欠動作対応

スリープ時の消費電力を極限まで抑え、必要時のみ起動してクラウド通信を行う設計。
バッテリー駆動や長期運用に適しており、I/O制御のタイミング設計が重要になります。

設置性と筐体設計

Armadillo-IoT A9EはDINレール対応の小型筐体を採用しており、制御盤などへの設置が容易です。Armadillo-IoT G3Lと比べて設置スペースや電源供給方式の見直しが必要になる場合があります。

開発に際して、Armadillo-IoT A9E トラブルシューティング事例が以下のサイトで確認できますのでご参考にしてください。

【参考リンク(外部サイト)】
Armadillo-IoT A9Eトラブルシューティングガイド
Armadillo-IoT A9E 製品マニュアル・開発ガイド

ArmadilloーIoT A9Eの機能拡張について

Armadillo-IoT A9Eは以下のようなインターフェースを標準搭載しており、外部機器との接続が容易です:

項目

Armadillo-IoT G3L

Armadillo-IoT A9E

GPIO

対応

対応(より多機能)

UART

RS422/RS485対応

複数ポート対応、RS485対応

USB

USB 2.0 Host ×1

USB 2.0 Host ×1

microSD

対応(SDIO)

対応

SPI

非対応

対応(新規追加)

CAN

非対応

対応(新規追加)

PWM

非対応

対応(新規追加)

DI/DO(デジタル入出力)

非対応

対応(新規追加)

Wi-SUN

オプション対応

非対応(2025年8月時点)

セキュアエレメント

非搭載

SE050搭載(セキュリティ強化)

ArmadilloーIoT A9E拡張性の強み

産業用途に強い:CANやSPI、PWMなど、FA機器やセンサ制御に必要なインターフェースを標準搭載。
セキュリティ強化:セキュアエレメント(SE050)により、鍵管理や暗号処理が可能。
省電力設計:GPIOやUARTなどのI/Oを間欠動作で制御可能。
DINレール対応筐体:制御盤などへの設置が容易。

G3LからA9Eへの置き換え時の注意点

Armadillo-IoT G3Lで非対応だったインターフェース(SPI/CAN/PWMなど)を活用する場合、ソフトウェア設計の見直しが必要。
・Wi-SUNなどの一部無線機能はA9Eでは未対応のため、用途に応じた通信方式の再検討が必要。
Armadillo-IoT A9EはYoctoベースのOSを採用しており、G3LのDebian環境とは開発スタイルが異なる。

Armadillo-IoT A9Eの拡張基盤設計について

Armadillo-IoT A9Eは拡張基板を設計開発することによって、機能拡張を行うことができます。
拡張基板設計のポイントを以下に記述します。

拡張インターフェース(CON10)

Armadillo-IoT A9Eには「CON10」と呼ばれる拡張用コネクタがあり、以下のようなインターフェースを設計に組み込むことが可能です:
・SPI
・CAN
・PWM
・DI/DO(デジタル入出力)
・UART(複数ポート)

これらは、FA機器やセンサ制御に必要な信号を扱うため、産業用途に適した設計が可能です。

アンテナ設計(ANT1/ANT2)

・LTEやWLAN/BT/THモジュールを搭載する場合、外付けアンテナの選定が必要です。
・RP-SMAまたはSMAコネクタを基板上に配置し、U.FLコネクタから同軸ケーブルで接続する構成が推奨されています。
・アンテナの配置は、干渉を避けるために基板端部に設けるのが理想的です。

電源設計

・拡張基板で外部機器を制御する場合、電源供給能力の確認が重要です。
・GPIOやDI/DOを使用する際は、電流制限抵抗や保護回路の設計も推奨されます。

筐体との整合性

・DINレール対応筐体を使用する場合、拡張基板のサイズやコネクタ位置は筐体の寸法と干渉しないように設計する必要があります。
・ケースオプションに応じて、ラベル貼付位置やケーブル引き出し方向も考慮しましょう。

以下は、Armadillo-IoT A9Eを使ったセンサ制御用の拡張基板設計例です。温湿度センサや照度センサなどのアナログ・デジタルセンサを制御する構成を想定しています。

センサ制御用拡張基板設計例(概要)
接続対象センサ例
温湿度センサ(I²C):SHT31、BME280など
照度センサ(ADC):フォトダイオード+オペアンプ
接点入力(DI):ドア開閉、スイッチ
アクチュエータ制御(DO):LED、リレー

■拡張基盤設計構成

機能

接続方式

備考

温湿度センサ

I²C

3.3V動作、プルアップ抵抗必要

照度センサ

ADC(PWM入力)

PWM→電圧変換回路を設計

接点入力

DI(Digital Input)

フォトカプラで絶縁推奨

出力制御

DO(Digital Output)

トランジスタまたはリレー制御

電源供給

3.3V / 5V

センサに応じて切替可能に設計

回路設計のポイント

I²Cラインのプルアップ抵抗(4.7kΩ程度)
DI入力にはフォトカプラを挿入し、外部ノイズ対策
DO出力にはMOSFETやリレーを使い、負荷駆動能力を確保
PWM信号をRCフィルタでアナログ電圧に変換し、ADC入力へ
センサ電源はジャンパで3.3V/5V切替可能に設計

まとめ

Armadillo-IoT A9E導入のメリットと検討ポイントを簡単にまとめると、以下のようになります。

■導入メリット
・高性能・省電力設計
・セキュリティ強化(SE050、セキュアブート、OP-TEE)
・多彩なインターフェースによる拡張性
・クラウド連携による運用効率の向上


■検討ポイント
・OSの違いによる開発スタイルの変化
・通信方式やインターフェースの再設計
・設置環境に応じた筐体サイズ・電源供給の見直し

Armadillo-IoT A9Eは、次世代のIoTゲートウェイとしてセキュリティ・省電力・クラウド連携を重視する現場に最適な選択肢です。
Armadillo-IoT G3Lからの移行を検討されている方は、ぜひ本記事のポイントを参考にしてみてください。

また、コネクシオではArmadillo-IoT G3Lの採用実績を活かし、Armadillo-IoT A9Eのソフトウェア開発なども承っています。
Armadilloシリーズの導入を検討しているが課題があるという企業の方は、ぜひコネクシオにご相談ください。

Armadillo-IoT A9Eについてご質問、ご購入はこちらへお問い合わせください

Armadillo-IoT A9Eの製品紹介ページはコチラ


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コネクシオのIoTシステム開発課に所属し、10年以上にわたりIoTシステムの開発に携わってきた有識者。積み上げてきた知見を駆使し、お客様のご要望に合わせたシステムの提案を行います。 CONEXIOBlackBearを使って色々な実証実験を行っています。
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