【製造業】IoT導入の課題やメリット、スムーズな導入に向けた解決策を解説
近年、新型コロナウイルス感染症の拡大をはじめ、原材料価格の高騰、半導体不足などの社会情勢の変化によって、製造業を取り巻く環境が変化しています。
環境変化に対応して、安定かつ持続可能な稼働を実現するには、デジタル化によって組織能力(ダイナミック・ケイパビリティ)(※)を強化することが求められます。
そこで必要となるのが、IoT(Internet of Things:モノのインターネット)の活用です。IoTの導入を検討している方のなかには、「どのような課題があるのか」「どのような準備が必要なのか」と疑問を持つ方もいるのではないでしょうか。
この記事では、製造業におけるIoT導入の課題とメリット、解決策について解説します。
※ダイナミック・ケイパビリティとは、環境変化に対応するために、組織内外の経営資源を再構成・再結合する能力のこと。
出典:経済産業省『2022年版 ものづくり白書』『製造業におけるDX』/総務省『平成27年版 情報通信白書』
目次[非表示]
製造業におけるIoT導入の課題
『平成30年版 情報通信白書』によると、日本企業におけるIoTの導入課題として、セキュリティリスクとIT人材の不足が多くの割合を占めています。特に、IT人材の不足は、ほかの国と比較して高くなっています。
画像引用元:総務省『平成30年版 情報通信白書』
出典:総務省『平成30年版 情報通信白書』
セキュリティリスクの増加
IoTを導入することで、これまでインターネットに接続されていなかった生産設備・機器などをインターネットに接続することが可能です。しかし、外部からの不正アクセスやサイバー攻撃のリスクが増加することが懸念されます。
『2022年版 ものづくり白書』によると、製造業も含む企業・団体におけるランサムウェア(※)被害の報告件数は2021年度で146件となっており、2020年度から増加しています。
▼企業・団体などにおけるランサムウェア被害の報告件数の推移
画像引用元:経済産業省『令和3年度 ものづくり基盤技術の振興施策』
サイバー攻撃によってシステム障害が発生すれば、設備の不具合による事故や重要データの漏洩につながる恐れがあります。
※ランサムウェアとは、感染したパソコン上のファイルを暗号化して使用できない状態にして、復旧と引き換えに身代金を要求する不正プログラムのこと。
出典:経済産業省『2022年版 ものづくり白書』『令和3年度 ものづくり基盤技術の振興施策』/総務省『平成30年版 情報通信白書』『IoTセキュリティガイドラインver1.0』『IoTセキュリティ対策として留意すべきルール』『国民のためのサイバーセキュリティサイト』
IT人材の不足
IoT導入を先導する人材が不足していることも課題の一つです。
『平成30年版 情報通信白書』によると、国内の企業においてIoT導入を先導する組織・人材が不足している企業は約30%となっています。
また、『2022年版 ものづくり白書』によると、製造業における人材育成・能力開発の問題点として、指導者の人材不足(63.5%)がもっとも多く挙げられています。
▼製造業における人材育成・能力開発の問題点
画像引用元:経済産業省『2022年版 ものづくり白書』
IT人材の確保のために、中途採用や新卒採用を行う選択肢もありますが、就業者数が減少している状況を踏まえると、新たな人材確保も容易ではないと考えられます。
なお、海外拠点にIoTを導入する際の課題については、こちらの記事で解説しています。
出典:総務省『平成30年版 情報通信白書』/経済産業省『2022年版 ものづくり白書』
製造業にIoTを導入するメリット
製造業におけるIoT導入には課題がある一方でメリットも存在します。
▼IoT導入のメリット
- 作業の効率化・省人化
- 品質の安定化
- 稼働停止リスクの低減
IoTを導入すると、IoTセンサーやカメラで稼働データを取得して監視したり、自動制御したりできるようになります。これまで人が行ってきた巡回点検や目視での検品作業、温度管理を自動化することで、業務の効率化・省人化につながります。
また、人手による点検・検品の作業をIoTによって自動化することで、人的ミスを削減して、勘や経験に依存しない生産体制を構築することが可能です。これにより、製品の品質安定化につながります。
さらに、生産設備の稼働データを取得・監視することで、正常と異なる動きを検知して、トラブルが発生する前にメンテナンスを行えます。生産設備の故障・事故を未然に防ぐことで、稼働停止ロスの防止、設備保全にかかる労力・コストの削減が期待できます。
蓄積された各種データを基に、生産量や稼働率を分析すれば、製造フロー、生産体制の見直しにも役立てられます。
IoT導入に向けた課題の解決策
製造業へのIoT導入をスムーズに進めるためには、課題に対する解決策を講じる必要があります。
①想定されるリスクに応じたセキュリティ対策
1つ目は、インターネットからの新たな脅威を想定して、リスクに応じた適切なセキュリティ対策を講じることです。
▼セキュリティ対策を行う際の流れ
画像引用元:経済産業省『「⼯場システムにおけるサイバー・フィジカル・セキュリティ対策ガイドライン」概要資料』
事前に、工場内の設備にIoT機器を設置するとどのようなセキュリティリスクがあるのか、問題点を洗い出すことがポイントです。具体的な対策として、外部のセキュリティサービスを利用する、強固な認証システムを導入するといった方法が挙げられます。
また、セキュリティ対策の重要性を理解してもらうために、従業員へ定期的にITリテラシーを向上する研修・勉強会を開くことも大切です。
出典:総務省『IoTセキュリティガイドラインver1.0』/経済産業省『「⼯場システムにおけるサイバー・フィジカル・セキュリティ対策ガイドライン」概要資料』
②IT人材の育成・確保
2つ目は、IT人材の育成・確保です。既存の人材に対してデジタル技術の研修・教育を行うほか、外部への依頼も検討する必要があります。
また、IoT機器を上手に活用するために、作業標準書や作業手順書、従業員のスキルマップを整備することも重要です。
▼IT人材の育成・確保に向けた取組み例
- 公共職業能力開発施設で行われているものづくり分野中心の職業訓練を受けてもらう
- 現場の業務内容に精通する従業員を中心に指導・教育を行う
出典:経済産業省『2022年版 ものづくり白書』
まとめ
この記事では、製造業におけるIoT導入について以下の内容を解説しました。
- IoT導入の課題
- IoTを導入するメリット
- IoT導入における課題解決策
製造業にIoTを導入すると、作業の効率化・省人化、品質の安定化、稼働停止の防止などさまざまなメリットが期待できます。
しかし、生産設備がインターネットにつながることによるセキュリティリスクや、IT人材不足の課題があり、IoT導入の障壁となっているケースもあります。
IoTを導入する際は、リスクに応じたセキュリティ対策の実施や、IT人材の育成・確保に取組むことが大切です。
コネクシオでは、製造業のIoT導入を実現するパッケージ型のソリューション『Smart Ready IoTソリューションセット』を提供しています。
詳しい内容は、こちらの資料をご確認ください。