製造業DXとは? 実現に向けた2つの課題と期待できるメリット
近年、世界規模でDX(Digital Transformation:デジタル・トランスフォーメーション)の取組みが進んでおり、IoTやAIなどのデジタル技術を活用して、新たな付加価値の創出、社会課題の解決などが図られています。
製造業も例外ではなく、DXの実現によって製造工程・稼働状況を可視化して、生産プロセスや技術継承などの課題が解決できると期待されています。
しかし、IT人材の担い手不足やデジタル技術に関する知識不足、レガシーシステム(※)の刷新などの課題を抱えており、DX化の足かせとなっている企業もあるのではないでしょうか。
この記事では、製造業DXの概要をはじめ、DXを推進するうえでの課題、DX化によって期待できるメリットについて解説します。
※レガシーシステムとは、最新の技術によって、古くなった技術や仕組みで構築されているシステムのこと。
製造業DXとは
DXとは、IoT・AIなどのデジタル技術や蓄積されたデータの活用によってビジネスモデルを変革して、新たな価値の創出、市場の優位性を確立することです。
製造業においては、IoT・AIの導入やデータ活用を通して、製造工程・プロセスの最適化、組織改革につなげることを指します。
近年では、経済政策や自然災害、パンデミック、半導体不足などの外的要因によって事業環境がめまぐるしく変化しており、将来の見通しが難しい状況です。このような状況のなか、自社製品の競争力を高めて、市場での優位性を確保していくためには、顧客のニーズをいち早く捉えて、タイムリーな新製品開発、付加価値サービスの創出につなげることが重要です。
DX化を推進することで、製造工程や稼働状況を可視化して、柔軟な判断ができる生産体制を構築できます。さらに、蓄積されたデータを活用して、需要予測・ニーズ分析に役立てることも期待されます。
なお、DXとIoTの違いについては、こちらの記事をご確認ください。
出典:経済産業省『2022年版 ものづくり白書 概要』『2022年版 ものづくり白書 第1部第1章第2節』
製造業DXを進めるうえでの課題
製造業DXを進めるにあたって、部門間の横断的な取組みが求められます。しかし、IT人材や技術・ノウハウの不足、レガシーシステムのブラックボックス化などの課題がDX化の妨げとなっているケースも少なくありません。
IT人材や技術・ノウハウの不足
人材確保や技術面の課題によって、DX化のためのIoT・AIなどのデジタル技術の活用を進められないケースがあります。
総務省が公表している『令和4年版 情報通信白書』によると、DXにおける推進課題として“人材不足”“デジタル技術の知識・リテラシー不足”が多くを占めていることが分かります。
画像引用元:総務省『令和4年版 情報通信白書』
DX化のためには、ITの技術・ノウハウを持つ人材確保が必要ですが、少子高齢化による人手不足が深刻化しているいま、新たな人材を確保することは容易ではありません。
人材・技術の不足を解消するには、外部の専門会社への依頼や、自社人材の育成が必要です。製造業におけるIT人材確保に向けた取組みとして、以下が行われています。
▼IT人材確保の取組み
画像引用元:経済産業省『2022年版 ものづくり白書』
また、人材育成・能力開発の取組みとして、“作業標準書や作業手順書の整備”“OFF-JT(Off The Job Training)の実施などが行われています。
出典:総務省『令和4年版 情報通信白書』/経済産業省『2022年版 ものづくり白書』
レガシーシステムのブラックボックス化
製造業DXの課題には、レガシーシステムのブラックボックス化も挙げられます。
部門ごとにレガシーシステムを分散管理している製造現場では、ブラックボックス化が進み、以下のような問題が生まれやすくなります。
▼ブラックボックス化による問題
- レガシーシステムが複雑化して、情報・データ管理が困難になる
- 限られた従業員しかレガシーシステムを取り扱えず、業務の属人化が発生している
- レガシーシステムの運用・保守に人材・コストがかかる
- ほかのレガシーシステムとのデータ連携ができない・円滑に進まない
このような状態でIoT・AIを導入したとしても、データの活用や連携が限定的となり、DXを本格的に推進することが難しくなります。
DX化を進めるためには、すべてのレガシーシステムが新たなデジタル技術に適用できるように見直すことが求められます。
製造業における人材不足やIT化の課題解決策については、こちらの記事で詳しく解説しています。併せてご覧ください。
出典:経済産業省『DXレポート』『令和3年度 ものづくり基盤技術の振興施策』
製造現場のDX化で期待できるメリット
製造現場のDX化を実現することで、以下のようなメリットが期待できます。
▼製造業DXを実現するメリット
- 業務・生産プロセスの効率化・最適化
- 生産性の向上
- 人的・生産コストの削減
- 業務の属人化の解消
- 新たな価値の創出
IoT・AIの活用によって、これまで人が行ってきた巡回点検や検品、事務処理などの業務の自動化・省人化を図れます。それによって、作業時間の短縮、人的ミスによるロスの削減が可能となり、生産性の向上につながります。
また、製造工程ごとの作業時間を分析して、人員配置や業務フローを見直せば、生産体制の最適化につながり、人的・生産コストの削減も可能です。
さらに、各業務の方法・ノウハウなどをデータとして取得・蓄積することで、部門間・従業員間のデータ共有を円滑に行えます。これまで個人の経験・勘に依存していた業務を標準化して、属人化を解消できれば、技術の継承や作業品質の安定化にも貢献します。
そのほかにも、設備機器・システムの稼働データや生産データを分析して、新たな製品・サービス開発、需要予測に役立てることも可能です。
なお、IoT導入によるメリットについては、こちらの記事で解説しています。
まとめ
この記事では、製造業DXについて以下の内容を解説しました。
- 製造業DXとは
- 製造業DXを進めるうえでの課題
- 製造業のDX化を実現するメリット
製造業DXは、業務効率の向上やコスト削減、業務の属人化の解消、新たな価値創出などのさまざまなメリットが期待できます。
ただし、本格的なDX化を進めるためには、IT技術・ノウハウを備えた人材の育成・確保をはじめ、レガシーシステムの刷新が求められます。
コネクシオでは、製造業DXを後押しするIoTソリューションを提供しています。IoTセンサーやシステム導入を一括サポートするため、自社のみで人材リソースの確保、システム構築が難しい場合にも、安心して導入いただけます。
また、課題分析チャートを用いて、企業さまの課題に合わせたデジタル技術の活用方法を紹介する、お役立ち資料を配布しています。こちらから資料をダウンロードいただけます。