
DXとIoT化を加速させる5Gとは?企業導入のメリットと活用事例
この記事でわかること
- DXとIoTの基本概念と両者の関連性
- 5Gの3つの技術的特徴とビジネスへの影響
- DX・IoT推進企業が5Gを導入すべき具体的理由
- 製造業・小売・医療・農業など業界別の活用事例
- 5G時代のDX・IoT推進に向けた具体的アクションプラン
近年、さまざまな場面で"5G"という言葉を耳にします。5Gがネットワークに関することとは理解していても、「5GによってDXやIoTがどのように変わるのか分からない」「どのような分野で活用できるのか分からない」という方も多いのではないでしょうか。
5Gは、私たちの生活をより豊かにするだけでなく、企業におけるDX(デジタルトランスフォーメーション)・IoT化にも深く関係しています。そのため、DX・IoT化をお考えの企業担当者の方は、5Gのメリットや活用分野について理解しておくことが重要です。
この記事では、5GがDXとIoTにもたらすインパクトを中心に、特徴やメリット、業界別の活用事例まで詳しく解説します。
目次[非表示]
DXとIoTの推進における5Gの重要性
まずは、DXとIoTの基本的な概念をおさらいしましょう。
用語解説:DX(デジタルトランスフォーメーション)
デジタル技術を活用して、ビジネスモデルや業務プロセス、組織文化などを根本から変革し、競争力を高めること。単なるIT化ではなく、顧客体験や事業構造の変革を伴う。
用語解説:IoT(Internet of Things/モノのインターネット)
あらゆるモノをインターネットにつなげて情報をやり取りし、新たな価値を生み出す仕組み。センサーや通信機能を搭載した機器が自動的にデータを収集・分析することで業務効率化や新サービス創出を実現する。
DXとIoTは密接に関連しています。IoTでモノから大量のデータを収集し、それを分析・活用することでビジネス変革(DX)を実現するという流れです。そして、この両者をつなぐ重要な要素が「通信インフラ」であり、次世代規格である5Gはその核となる技術なのです。
5Gとは?
5Gとは"5th Generation"の略で、第5世代移動通信システムを意味します。
日本国内におけるネットワークの通信規格は、これまで1〜4G(第1〜第4世代)があり、現在は4Gが一般的に広く普及しています。5Gは、この4Gに代わる新たな通信規格として登場しました。
5Gの通信環境では、現在の4Gと比べて通信速度や接続品質が飛躍的に向上し、スマートフォンやタブレットなどのデジタルデバイスに限らず、あらゆるモノがネットワークにつながる環境を実現できるようになります。これにより、企業のDXとIoT化を強力に推進する基盤が整うのです。
日々の生活はもちろん、医療現場や製造業・農業・建設業など、さまざまな分野における環境の変化が期待されています。1Gから5Gに至るまでの移動通信システムは、約10年ごとに進化しています。
通信キャリアでの5Gのサービス提供は2020年3月からスタートしており、今後も段階的に整備される予定です。
▼移動通信システムの進化
画像引用元:総務省『令和2年版 情報通信白書のポイント』
また、通信キャリアが展開する5Gとは別に、企業や自治体が独自に構築する“ローカル5G”という通信システムもあります。
ローカル5Gについては、こちらの記事をご確認ください。
出典:総務省『令和2年版 情報通信白書のポイント』『令和2年版 情報通信白書|我が国における5Gサービスの開始』『第5世代移動通信システム(5G)の今と将来展望』
5Gの3つの特徴
5Gには、主に高速大容量通信・超低遅延通信・多数同時接続という3つの特徴があります。
▼5Gの特徴と4Gとの違い
4G |
5G |
DX・IoTへの影響 |
|
通信速度 |
約110Mbps~1Gbps |
約10~20Gbps |
高精細映像の活用、ビッグデータのリアルタイム処理が可能に |
通信遅延 |
約10ms(0.01秒) |
約1ms(0.001秒) |
遠隔操作の精度向上、自動制御システムの高度化 |
多数同時接続 |
約10万台/km2 |
約100万台/km2 |
より多くのIoTデバイス導入、きめ細かいデータ収集が実現 |
高速大容量通信
5Gは4Gと比べて通信技術が進化していることから、大容量データの高速かつスムーズな通信が可能です。総務省によると、5Gの通信速度は4Gの10倍以上になると見込まれています。
これにより、企業のDX推進において以下のようなメリットが生まれます:
- 工場内の高精細カメラ映像をリアルタイムで分析し、品質管理を自動化
- AR/VR技術を活用した遠隔作業支援や高度な技術研修の実現
- AIによるビッグデータ分析をクラウド上でリアルタイム処理
超低遅延通信
通信遅延の時間が4Gの約10分の1まで短縮されるため、タイムラグを意識せずに遠隔地とのリアルタイムな通信が可能になります。
DX・IoT推進において、この特徴は以下のような革新をもたらします:
- 自動車の自動運転システムの安全性向上
- 遠隔医療における手術ロボットの精密操作
- 建設業・製造業における遠隔地のロボット操作の高精度化
- 危険作業の遠隔操作による安全性確保
多数同時接続
5Gでは、同時接続できるデバイス数が1km²あたり100万台となり、4Gの約10倍になります。これにより、スマートフォンやタブレットだけでなく、家電、自動車、生産設備など、あらゆるモノとの同時接続が可能です。
- スマートシティにおける膨大なセンサーからのデータ収集・活用
- 工場全体の設備をIoT化し、生産ラインの完全自動化・最適化を実現
- 農業における広大な農場への多数センサー設置による精密農業の推進
▼5Gで変わること
出典:総務省『令和2年版 情報通信白書のポイント』
『第5世代移動通信システム(5G)の今と将来展望』
DX推進企業が5Gを導入すべき理由
5Gを利用できるようになると、IoT化の促進をはじめ、新たな製品・サービスの開発、働き方改革の促進など、さまざまなメリットが得られ、企業のDX推進が加速します。
IoT化の促進によるデータドリブン経営の実現
5Gを利用して、多数同時接続や遠隔地からのリアルタイム通信が可能になることで、企業のIoT化を促進できるメリットがあります。これにより、データドリブン経営への移行が容易になります。
5GとIoTを組み合わせて、遠隔地からのリアルタイムな操作・監視などができるようになると、業務の効率化だけでなく、データに基づく意思決定が可能になります。
IoTの活用例
- オフィスの照明器具やエアコンなどをスマートフォンで操作し、エネルギー使用量を最適化
- 倉庫や管理室などの入退室管理をリアルタイムで行い、セキュリティと業務効率を向上
- IoTセンサーでデータを収集して設備の稼働状況を遠隔監視し、予防保全を実現
- 物流網全体にセンサーを配置し、サプライチェーン全体を可視化・最適化
新たな顧客体験を創出する製品・サービスの開発
5Gの特徴を生かして、新たな製品・サービス開発につなげられることもDX推進の重要なポイントです。
利便性の向上や付加価値の創出によって、企業価値、顧客満足度の向上が期待できます。
新たな製品・サービスの例
- IPカメラで収集した高精細画像をAIで分析する防犯・マーケティングサービス
- ウェアラブル装置やIPカメラによる患者・高齢者の健康状態モニタリングと予防医療サービス
- XR(AR/VR/MR)技術を活用した遠隔体験型ショッピングサービス
- デジタルツインによる都市・施設のモニタリングと最適化サービス
IoTデバイス活用を最大化する5G通信の優位性
5Gの活用により、さまざまなIoTデバイスから場所を選ばず円滑に通信できる環境を構築できます。これにより、多様な働き方の実現、業務効率化といった働き方改革の促進も期待できます。
IoTデバイス活用の具体例
- リモートワーク中の複数の従業員とタイムラグのないWeb会議を行い、対面と変わらないコミュニケーションを実現
- 外出先のパソコンから会社のサーバやクラウドサービスに高速アクセスして業務を行う
- 給餌ロボットや薬剤散布ドローンを使い、自宅から畜産・農作業管理を遠隔で一元管理
- スマートグラスを活用した現場作業者への遠隔支援・作業指示の提供
業界別DX・IoT×5G活用事例
5Gの活躍が期待される分野の一例として、スマートファクトリー・スマート農業・スマートリテール・スマートヘルスケアなどが挙げられます。ここでは、業界別の具体的な活用事例を紹介します。
製造業:スマートファクトリーの実現
スマートファクトリーとは:IoT・AIなどの先進技術を活用した新たな工場のこと。工場内設備の見える化・自動化・データ活用などを実現し、生産性と品質の向上を図る取り組み。
5G×DX・IoTの活用例
- 生産ラインに設置したIoTセンサーから温湿度や振動を察知して、予知保全を行い、ダウンタイムを最小化
- 熟練者の手元を撮影した高精細映像をAIが分析して、技術継承に役立てる「暗黙知のデジタル化」
- AR技術を用いた作業支援により、点検精度の標準化と作業効率の向上を実現
- 工場内の無人搬送車(AGV)をリアルタイムで制御し、生産ラインの最適化を図る
農業:スマート農業による生産性革命
スマート農業とは:IoT・AI・ロボットなどの先進技術を活用した新たな農業のこと。省力化・精密化・高品質生産などを実現し、持続可能な農業経営を目指す。
5G×DX・IoTの活用例
- ビニールハウス内に設置したIoTセンサーから収集した温湿度や照度などのデータを遠隔監視して、最適な栽培環境を維持
- 農作物の生育状況と天候データを収集して、AIによる収穫予測・最適収穫時期の判断を支援
- ドローンによる広域農場の監視と精密な農薬散布の自動化
- 自動運転トラクターや収穫ロボットによる労働力不足の解消
小売業:スマートリテールによる顧客体験革新
スマートリテールとは:IoT・AI・デジタル技術を活用した次世代の小売形態。顧客体験の向上と業務効率化を両立させる取り組み。
5G×DX・IoTの活用例
- 店舗内カメラとAI分析による顧客動線・滞留分析と最適な商品レイアウトの実現
- デジタルサイネージと顧客のスマートフォンを連携した、パーソナライズド広告の提供
- 無人店舗システムによるレジレス購入体験と人件費削減の両立
- VR/ARを活用した仮想フィッティングや商品体験サービスの提供
医療:スマートヘルスケアによる医療革新
スマートヘルスケアとは:IoT・AI・ロボット技術などを活用した医療・健康管理の高度化。遠隔医療や予防医療の推進、医療の質向上と医療従事者の負担軽減を目指す。
5G×DX・IoTの活用例
- 遠隔地の専門医による高精細映像を用いた遠隔診断・手術支援
- ウェアラブルデバイスによる患者のバイタルデータの常時モニタリングと異常の早期発見
- 医療画像の瞬時な送受信とAI診断支援による診断精度の向上
- 介護施設におけるIoTベッドやセンサーを活用した見守りシステムの構築
5G時代のDX・IoT導入に向けた課題と解決策
5GによるDX・IoT推進には大きな可能性がありますが、導入や活用には課題も存在します。ここでは、よくある課題と解決策をQ&A形式で解説します。
Q: 5G導入にかかるコストはどれくらいですか?
A: 5G導入コストは規模や用途によって大きく異なります。キャリア提供の5Gサービスを利用する場合は、対応端末の導入と通信費が主なコストとなります。一方、ローカル5Gを自社構築する場合は、設備投資が必要ですが、段階的な導入や補助金の活用で初期コストを抑えることが可能です。ROI(投資対効果)を明確にした導入計画が重要です。
Q: DX・IoT推進のボトルネックとなる課題は何ですか?
A: 多くの企業が直面する課題として、①専門人材の不足、②セキュリティリスクの増大、③既存システムとの連携、④データ活用のノウハウ不足などが挙げられます。これらの課題に対しては、外部専門家との連携、段階的な導入、社内教育の充実などが有効な解決策となります。
Q: IoTデバイスのセキュリティ対策はどうすればよいですか?
A: IoTデバイスの増加に伴い、セキュリティリスクも高まります。対策としては、①適切なアクセス制御、②デバイスの定期的なアップデート、③通信の暗号化、④セキュリティ監視体制の構築が重要です。特に5Gの特徴を活かしたネットワークスライシングなど、新たなセキュリティ技術の活用も検討すべきです。
まとめ:DX・IoT推進における5G活用のロードマップ
この記事では、DXとIoT推進における5Gの役割について以下の内容を解説しました。
- DXとIoTの基本概念と5Gとの関連性
- 5Gの3つの技術的特徴(高速大容量・超低遅延・多数同時接続)
- DX推進企業が5Gを導入すべき具体的な理由
- 製造業・農業・小売業・医療などの業界別活用事例
- 導入における課題と解決策
5Gは、高速大容量通信・超低遅延・多数同時接続といった3つの特徴を持つ次世代通信規格です。4Gと比べて通信技術が飛躍的に向上しているため、企業のDXとIoT推進において大きな変革をもたらすことが期待されています。
企業のDX・IoT推進においては、単なる技術導入ではなく、ビジネスモデルや業務プロセスの変革を伴う包括的な取り組みが必要です。5Gはそのための強力な基盤技術となり、IoT化や働き方改革の促進、新たな製品・サービスの開発などに大きく貢献します。
次のステップ:5G時代のDX・IoT推進アクションプラン
-
現状分析と課題の明確化
- 自社のDX・IoT成熟度の診断
- 5G活用による解決可能な業務課題の洗い出し -
小規模な実証実験(PoC)の実施
- 限定エリアでのローカル5G活用実験
- 特定業務プロセスへのIoTデバイス導入と効果測定 -
社内体制の整備と人材育成
- DX・IoT推進チームの組成
- 5G・IoT関連技術の社内教育プログラムの実施 -
段階的な全社展開
- 成功事例の水平展開
- 全社的なDX戦略への組み込み
5Gの導入は、業務の効率化、新サービスの開発、働き方改革といった企業課題の解決に大きく貢献します。貴社のDX推進においても、5Gの導入・活用を前向きに検討してみてはいかがでしょうか。
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