医薬品の適正流通(GDP)ガイドラインに基づく温度管理とは
医療機関や薬局などに医薬品が供給されるまでのプロセスにおいて、製薬会社・卸売販売会社・物流会社など、流通経路の複雑化により、さまざまな人が関与するようになりました。
そのような背景から、厚生労働省では、医薬品の流通過程における品質・完全性を保証することを目的として、『医薬品の適正流通(GDP)ガイドライン』を定めています。GDP(Good Distribution Practice:医薬品の適正流通)ガイドラインには、医薬品の保管・輸送時における“温度管理”について記載されています。
この記事では、GDPガイドラインの概要をはじめ、医薬品の温度管理について解説します。
なお、IoTを活用した温度管理や温度管理システムのメリット・デメリットについては、こちらの記事をご確認ください。
出典:厚生労働省『医薬品の適正流通(GDP)ガイドライン』
目次[非表示]
- 1.医薬品の適正流通(GDP)ガイドラインとは
- 2.医薬品の温度管理
- 2.1.GDPガイドラインに基づく温度管理
- 2.2.日本薬局方が定める温度の基準
- 3.まとめ
医薬品の適正流通(GDP)ガイドラインとは
GDPガイドラインとは、医薬品の流通過程において品質や完全性を保証するための適切な手法について定めた規定です。医療機関や薬局に供給される医薬品は、製造過程だけでなく、出荷・保管・販売といった工程においても適切な品質管理が求められます。
医薬品の品質や流通経路での完全性を保証するには、製造販売事業者・卸売販売事業者などの品質管理業務を画一化して、一定水準を維持することが重要です。
そのために、医薬品の仕入れや保管、供給業務に関する品質管理の基準をまとめたGDPガイドラインが定められています。
医薬品の保管・輸送を行う事業者は、GDPガイドラインの基準を守り、すべての工程において適切な品質管理を行うことが重要です。
GDPガイドラインでは、大きく9つの項目に分けて規定されています。
▼GDPガイドラインの規定内容
項目 |
規定内容 |
品質マネジメント |
|
職員 |
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施設および機器 |
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文書化 |
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業務の実施 |
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苦情、返品、偽造の疑いのある医薬品および回収 |
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外部委託業務 |
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自己点検 |
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輸送 |
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厚生労働省『医薬品の適正流通(GDP)ガイドライン』を基に作成
2021〜2022年、新型コロナワクチン(以下、ワクチン)の温度管理の不備による事故によって、ワクチンが廃棄された事案が見られました。
適切な温度管理を行わない場合、品質の劣化を招くほか、ワクチンのように廃棄処分される可能性があります。
そのため、医薬品の保管・輸送の際は、適切な温度管理を行うことが重要です。
出典:厚生労働省『医薬品の適正流通(GDP)ガイドライン』『新型コロナワクチンの職域接種におけるワクチン廃棄事案について』
医薬品の温度管理
GDPガイドラインでは、流通過程における品質マネジメントに重点が置かれていますが、なかでも温度管理は重要なポイントです。
なかには、厳格な保管温度管理を要求する医薬品もあるため、保管・輸送の際は、温度逸脱を防ぐための適切な対策を講じる必要があります。
GDPガイドラインに基づく温度管理
GDPガイドラインでは、医薬品の環境管理や、保管・輸送時の温度管理についての規定が示されています。
▼温度および環境管理
- 保管施設の適切な温度維持
- 保管場所使用前の温度マッピングの実施
- 温度モニタリング機器の設置
- 潜在的なリスク評価の実施・温度センサーの設置
- 温度計・温度記録装置・空調設備等の設計・設置・保守・洗浄
▼保管
光・温度・湿気・外部要因等の有害な影響からの保護
▼輸送
- 輸送中の温度条件範囲の維持
- 温度逸脱に関する調査・取扱いの手順の規定
- 温度逸脱が生じた場合の卸売販売事業者等への報告
- 輸送中の車両・容器内の温度モニタリング機器の定期的な保守および校正
- 温度感受性の高い医薬品に対する適格性が保証された機器の使用
出典:厚生労働省『医薬品の適正流通(GDP)ガイドライン』
日本薬局方が定める温度の基準
医薬品の保管に関する規定において、「常温で保管する」「冷所で保管する」などと記載されていることがあります。
日本薬局方では、5つの温度帯と、それらが表す温度の数値を次のように定めています。
▼保管場所の温度帯
標準温度 |
20℃ |
常温 |
15~25℃ |
室温 |
1~30℃ |
微温 |
30~40℃ |
冷所 |
1~15℃ |
出典:厚生労働省『第十八改正日本薬局方』
まとめ
この記事では、医薬品の適正流通(GDP)ガイドラインについて、以下の項目を解説しました。
- 医薬品の適正流通(GDP)ガイドラインとは
- 医薬品の温度管理
医薬品の流通経路が複雑化しているなか、品質保証と流通過程における完全性を保証するために、GDPガイドラインに基づいて品質管理を行う必要があります。
特に温度管理は、定められた温度基準から逸脱した場合、品質の低下や廃棄処分につながる可能性があるため、管理体制の強化を図ることが重要です。
しかし、医薬品に応じて適切な温度管理を行うために、大がかりな設備・システムを導入することは容易ではありません。
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