生産現場の見える化とは? 目的や実施のステップを解説
生産現場の問題として、「業務が熟練工に属人化している」「生産効率が上がらない」「設備の故障で生産が停止してしまう」などが挙げられます。
こうした問題は業務プロセスや基準が明文化されていない、業務の問題点を把握できない、設備故障の前兆を把握できないといったように、プロセスや問題点が「見えない」ことが原因の一つと考えられます。
業務の標準化や生産効率の向上、稼働の安定化を実現するためには現場の“見える化”が必要です。本記事では、生産現場における見える化の目的や実施のステップについて解説します。
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生産現場の見える化とは
見える化とは、広義にまとめると「これまで目に見えなかったモノを見える状態にすること」です。目に見えない状態では、経験や憶測などによる判断に頼らざるを得ず、的確な状況把握が困難です。
的確な状況把握は現場の業務改善、ひいては経営判断をするうえでも重要となるため、見える化の取り組みは幅広い業種で進められています。たとえば、製造業の生産現場では以下のような見える化の取り組みがされています。
▼生産現場における見える化の例
- 業務プロセスを明文化する
- 生産ラインの稼働状況をデータ化する
- 設備機器の稼働状況をデータ化する
明文化やデータ化により、目に見えなかったモノが見えるようになります。しかし、見える化はあくまで目的達成(課題解決)の手段です。
重要なのは、見える化そのものをゴールにするのではなく、その後の目的に合わせて運用していくことです。
生産現場を見える化する目的
生産現場で見える化を行う目的の例としては、以下の3つが挙げられます。
①業務の標準化
1つ目は熟練工の経験やスキルに依存していた業務を明文化して共有し、業務の標準化を図ることです。
たとえば、手作業や目視を要するプロセスがあり、その一つひとつの基準が明確に共有されていない場合、品質は個々人の経験・スキルに依存します。
経験やノウハウが明文化されていない状態では、人によって精度の差が生じるほか、若手が技術を学ぶことも困難です。これにより、業務を一定の品質に保てない、これまで培った技術の継承ができないといった問題につながります。
熟練工のノウハウを見える化して業務を標準化することで、品質の担保や若手人材の育成につながります。
②生産効率の向上
2つ目は現状の生産工数や非効率な業務を洗い出し、生産効率の向上につなげることです。
たとえば、生産ラインにIoTセンサーを設置し、開始・完成地点の稼働状況を計測することで、製品一つあたりにかかる生産時間の算出が可能です。また、生産プロセスごとに稼働状況を細かく計測することで「待機時間が発生している」「動線の無駄が発生している」などの問題点を抽出できます。
こうした見える化により、問題点の改善策を講じられるようになり、生産効率の向上につなげられます。
③品質・稼働の安定化
3つ目は生産品質を維持し、安定した稼働を継続することです。
設備機器の故障・エラーによるラインの停止は、コスト損失やロスによる機会損失につながることがあります。設備機器の稼働データを蓄積し、稼働状況を監視することで、設備の異常検知が可能になります。
異常検知により、故障や不具合の兆候にすばやく対処できるようになるため、生産ラインの長期停止や重大事故などの防止が期待できます。これは修理コストの削減や出荷遅延の防止にも寄与します。
生産現場の見える化に向けた5つのステップ
生産現場の見える化は次のようなステップで進められます。
①目的の設定
見える化によって何を改善するのか、現場の課題に応じて目的を定めます。
▼設定する目的の例
- 業務の標準化
- 生産効率の向上
- 品質・稼働の安定化
目的を定めることで、生産現場で見える化する範囲や洗い出しが必要なデータを決めることが可能です。
②環境の構築
見える化するデータを決定した後は、見える化に必要な環境を構築します。具体的には、インターネット環境の整備、IoT機器・システムの導入があります。
▼見える化に向けた環境構築に必要なもの
- データ活用のための工場内のインターネット環境
- 設備機器のデータを取得するためのIoTセンサーやカメラ
- 取得データを確認・保存するためのサーバやパソコン、タブレット
- データを分析・管理するためのシステムやツール
ただし、工場内のネットワーク構築については大幅な工事や改修が必要になるケースもあります。IoTセンサーやカメラを導入する際は、工事の有無についても確認が必要です。
環境構築コストだけではなく、生産効率向上や品質安定化といった将来的な利益も考慮しながら検討する必要があります。
③処理・対応ルールの作成
生産現場の見える化によって、業務の標準化や品質・稼働の安定化などにつなげるためには、設備機器の稼働データにおける正常値・異常値の基準をマニュアル化して、その基準に従って処理を実行する必要があります。
「どの基準で故障・エラーとするか」といったルールの策定により、個人の経験による判断を減らし、業務レベルを統一できます。
また、設備機器の異常が発生した場合、報告・対処の方法を現場に周知しておくことも欠かせません。IoTセンサーやAIによって異常を自動検知してくれるツールを活用するのも一つの方法です。
④データの蓄積・分析
環境構築によって見える化を実現した後は生産現場のデータを蓄積して分析を行うこともポイントです。
たとえば、生産効率向上が目的の場合は、不良品の発生数や作業時間などのデータを分析し、製造工程、点検期間などの見直しを図ります。
改善策に対する効果検証を実施し、さらなる改善策を繰り返すことで、より安定して効率的な稼働体制を実現することが可能です。
まとめ
生産現場の見える化には、業務の標準化や生産効率の向上、品質・稼働の安定化などの目的があります。
見える化によって製造現場のデータ共有・分析が可能になることで、現状と課題の把握が可能です。これにより、作業品質の向上や若手人材の育成、生産工程の最適化、トラブルの早期発見を実現できます。
見える化を実施する際は、目的を明確に設定して見える化するデータを決定したのち、環境の構築、処理・対応ルールの作成、データの蓄積・分析といった一連のステップを踏むことがポイントです。生産効率向上や安定稼働に向けて、見える化を進めてみてはいかがでしょうか。
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