プライベートLTE導入の課題と活用シーン
LTEとは携帯電話に採用されている無線技術であり、一般企業や自治体で独自に無線通信ネットワークを利用する際にも活用できます。
たとえば、製造業でプライベートLTEを活用する場合、工場内の設備や機械のIoT化、スマートファクトリーの実現が加速するといわれています。
プライベートLTEは、有線でのネットワーク構築が難しい大規模な工場や、遠隔制御装置や監視装置を使用するケースなど、安定した通信が求められる状況において活用が期待されています。
この記事では、プライベートLTEのメリットや導入のために押さえておきたい点、活用が期待できる事業などを解説します。
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プライベートLTEとは
プライベートLTEとは、通信キャリアが提供する携帯電話向けの通信規格であるLTEのうち、一般企業や自治体が独自に構築できる通信システムのことです。
通信キャリアの回線とは別に、企業が独立した無線ネットワークを構築できるため、干渉が少なくセキュリティ性の高い通信ができます。公衆のLTEとは異なり、無線免許を保有する必要がないのも特徴です。
近年はプライベートLTEと同様に安定性・セキュリティ性に優れた通信規格として、ローカル5Gという通信システムも登場しています。
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プライベートLTEのメリット
一般的なLTE通信では、アクセス集中時や非常時に接続が不安定になりやすいこと、不特定多数の人が利用するためセキュリティ面に不安が残ることなどの課題がありました。
プライベートLTEでは、同時利用者の数が多く、干渉や接続の不具合が懸念されるLTEと回線を切り離すことで、以下のような効果が期待できます。
▼プライベートLTEの導入で期待できる効果
- 企業の独立した閉域通信網によるセキュアな通信が可能
- SIM認証による強固なセキュリティ性能を確保
- 外部からの干渉が少ない
敷地の広い工場でも安全な無線通信を安定して確保できる点が、Wi-Fiと比較しての大きな違いです。製造現場のIoT活用による設備機器の無線化、AI活用による自動化などを進めるうえでも、プライベートLTEの活用が期待されています。
プライベートLTE導入時の課題
IoTやAIを活用し、人手の作業を自動化・省人化するための通信基盤として有効なプライベートLTEですが、導入のために解決しなければならない課題もいくつか存在します。
無線基地局の設置
免許不要な周波数帯域を利用することでLTEシステムを構築することは可能ですが、その作業は決して容易ではありません。
モバイルキャリアの無線基地局には、“ライセンスバンド”という割り当てられた周波数の帯域が利用されています。この帯域は総務省が電波法に基づいて管理を行っており、利用には免許が必要となるため設置が難しいという課題があります。
こうした課題の解決策として、sXGPという自営通信向けの規格が登場しています。sXGPに関する技術基準適合証明等を取得することで、無線免許を取得することなく設置が可能です。
個人や企業に適したEPC機能の導入
LTEのアクセスシステムを収容するコアネットワークをEPC(Evolved Packet Core)といいます。EPCは主に通信キャリアやベンダー向けに開発されており、個人や中小規模の企業が導入するには高コストという課題がありました。
こうした課題を解決するために、近年ではEPCをクラウド上に設置して比較的安価に導入できるシステムも登場しています。工場の規模や接続環境に応じて運用コスト、適した機能のEPCを選ぶことが重要です。
プライベートLTEの活用が期待できる事業
プライベートLTEは、工場・倉庫や病院などさまざまな施設において活用が期待されています。
工場・倉庫
工場や倉庫のあらゆる設備・機械を企業独自の無線ネットワークに接続できます。干渉の少ない安定した通信を実現できるため、以下のような活用が可能です。
▼工場や倉庫での活用例
- カメラ映像データの送信による稼働状況の遠隔監視
- 人手による機械計測・点検作業をIoTで無線化
- カメラ・センサーによる異常検知
- 設備・機械の無線化
- 複数拠点の在庫状況をシステムで可視化
これまで人手で行っていた作業をIoTやカメラを活用して無線化することで、現場の省人化・作業の効率化につなげられます。また、無線化によって工場内の配線が不要になるため、生産ラインの変更も行いやすくなります。
一次産業
プライベートLTEは、農業や水産業をはじめとした一次産業のIoT活用に貢献します。
▼農業や水産業での活用例
- IoTモニタリングシステムによる海面・洋上の監視
- カメラやセンサーによる培養液の供給
- センサーから収集されたビッグデータの解析によるノウハウの共有
カメラや携帯端末、各種センサー類などを活用することで生産に関するさまざまなデータを収集できるため、人材育成や生産管理に役立ちます。また、農園や養殖場などの監視・点検も、無線化により遠隔地から行うことが可能です。
まとめ
プライベートLTEを利用することで、通信キャリアが提供するLTE回線と切り離し、企業独自の無線ネットワークを構築できます。
Wi-Fiではカバーできなかった広範囲のエリアや電波干渉を避けたい工場内のIoT機器の通信においても、安定してセキュアな通信を可能にします。
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