興人ライフサイエンス
大分県佐伯工場

閉域網×AWSで実現する製造業データ駆動型DX:セキュアなデータ活用でユーティリティコストの削減を実現
~フェーズ1 : エネルギー・生産量の見える化によるコスト削減とオペレーション最適化~

興人ライフサイエンス株式会社 様
https://www.kohjinls.com/ (外部サイト)

興人ライフサイエンス様(以下、興人LS)は、株式会社興人の時代から半世紀以上の歴史を持ち、「微生物培養技術」を核として、酵母エキス、食料品、飼料、肥料の製造、および医薬品、医薬部外品、化学工業薬品を製造しています。 その生産拠点である大分県佐伯工場にて、DXおよびスマートファクトリーの実現に取り組んでおられます。コネクシオは、生産設備やセンサーデータの収集・見える化を行い、DX化の礎となる「IoT基盤」の開発を担当いたしました。

  • 最先端クラウド技術を活用したスマート工場化を目指していたが、セキュリティ上の懸念があった。
  • 部門内で必要なデータは取っていたが、部門間でリアルタイムにデータが共有できておらず、ムダなオペレーションが発生していた。
  • それにより、エネルギー消費のムダ、オペレーションのムダ、設備稼働のムダが発生していた。
  • インターネットを通らない閉域網により懸念を払拭し、クラウドにデータ集約基盤を構築。
  • AWS(Grafana)を用いたユーティリティダッシュボードを作成。部門全体で見える化し、オペレーションを最適化することで、大幅省エネに成功。
  • オペレーションを最適化した結果、追加予定だった設備購入コストを削減できた。

【興人ライフサイエンス様の役割】

  • システム開発におけるプロジェクトマネジメント
  • システム仕様定義
  • 現場向け見える化ダッシュボードの自社構築・運用

【コネクシオ提供サービス】

  • 要求仕様に基づく、最適なセンサーおよびIoTゲートウェイの選定・提供
  • PLC、各種センサー、流量計との接続、データ取得・処理ソフトウェア開発
  • AWSデータレイク環境・見える化アプリケーションの提案から構築
  • モバイル閉域網サービス「TRIBE-biz VPN」の提供
  • GrafanaおよびAWSに関する技術研修・内製化に伴走するレクチャーの実施

閉域網×AWSで安全なスマート工場化とコスト削減を実現!


興人LS佐伯工場は、ユーティリティ(熱水・蒸気・電力)コストの削減に向け、スマート工場化に着手。
FAネットワークの厳しいセキュリティ要件を、コネクシオの閉域網通信とIoTゲートウェイでクリアし、AWSへのデータ集約基盤を構築しました

その結果、ユーティリティコストの大幅な削減に加え、データに基づく検証により新規設備への投資抑制にも成功されています 

IoT基盤システム構成 概要図

IoT基盤システム構成 概要図

伝統あるバイオ工場が直面した「スマート化」への挑戦


大分県佐伯市に位置する興人LS佐伯工場は、1953年の操業開始以来、日本のバイオ・発酵産業を牽引してきました 。同工場で生産される「トルラ酵母」は、ドイツで栄養補助食品として利用されているほか、米国FDA(食品医薬品局)からも高い安全性を認められており、世界各国の食品や医薬品、飼料等に幅広く利用されています 。

「製造業が求める品質向上や生産性の向上は、各々の最適なオペレーションが積み重なった結果として実現される。私たちは常にこの『最適化』を追い求めてきた」

製造業における不変のテーマは「品質・生産性の向上」「原価低減・収益向上」「安全操業」「ジャストインタイム」です 。佐伯工場ではこれらのテーマを高いレベルで達成していましたが、さらなるレベルアップを果たすためには、従来の延長線上にある改善活動ではなく、「最新ツール活用への発想転換」と「生産活動の本質の追求」によるスマート化へのチャレンジが必要であると考えていました 。

特にコスト面において課題だったのが、熱水、蒸気、電力といった「ユーティリティコスト」でした 。微生物の培養・発酵プロセスは膨大なエネルギーを消費するため、このユーティリティのムダを極限まで排除することが、工場の持続可能な収益性向上(原価低減)に直結する状況にありました 。

セキュリティの壁とテクノロジーの制限


プロジェクトの立ち上げにあたり、同社は複数の既存FA(ファクトリーオートメーション)メーカーに相談を持ちかけました 。しかし、そこで提示された提案の多くは、工場内に「ローカルサーバーを設置する」ことを前提とした、従来型のオンプレミスシステムでした 。

当時の佐伯工場が直面していた課題は、大きく分けて以下の3点でした。

① 強固な「セキュリティの壁」とクラウド活用のジレンマ

同社が目指していたのは、将来的な拡張性や、高度なデータ解析・AI連携を見据えた「クラウド(AWS等)をベースとしたデータ駆動型プラットフォーム」の構築でした 。 しかし、工場の制御ネットワーク(FAネットワーク)は、万が一にも外部からのサイバー攻撃やウイルス感染による操業停止を招いてはならない極めて機密性の高い領域です。社内の一部からは、「FAネットワークからインターネットに直接データを出すなど、セキュリティ上絶対にNGである」という非常に強い抵抗と懸念の声が上がりました 。クラウドを活用したいという理想と、インターネット接続の危険性を排除したいという現実のセキュリティルールの間で、プロジェクトは大きなジレンマに陥っていたのです 。

② テクノロジー制限による「妥協に満ちた現場業務」

従来のシステム環境にはテクノロジー的な限界があり、現場のオペレーションは多くの「妥協」によって成り立っていました 。

  • アナログな情報管理: 工場内の発生事象や計器の記録は、依然として「紙」や「写真」ベースで行われていました 。
  • 転記と集計の手間: 現場の工程担当者がDCS(分散型制御システム)画面や計器から条件、投入量、出来高を目視で読み取り、作業報告書を手書きで作成 。それを工程管理者がExcelに入力し、さらに生産管理者が月次で原価計算システムへ手動で集計・入力するという、重層的な転記作業が発生していました 。
  • 評価のタイムラグ: データの集計や会議での検討には数時間から数日を要しており、何かが発生した後の「結果」でしか判定できない状態でした 。

「報告書を作ることやデータをExcelに転記することが仕事になっていないか? そもそもなぜ監視し、報告するのか。本質は製造プロセスの状態を適切に判断し、最適な状態に制御すること(オペレーションの最適化)であるはずだ

同社はこの状態を「テクノロジー制限による妥協」と捉え、最新のITを活用して本来の姿(リアルタイムな状況把握と自律対応)へ変革する必要性を痛感していました 。

③ 膨大なエネルギー消費と「見えないムダ」

広大な敷地に点在する各種貯蔵タンクや加温タンク、撹拌機などの設備において、具体的にどこで、どれだけの電力や蒸気、熱水が「無駄に消費されているか」をリアルタイムに突き止める手段がありませんでした 。全体としてのエネルギー消費量は把握できても、個々の設備ごとの詳細な挙動とエネルギー消費の因果関係(相関性)がブラックボックス化していたため、有効な省エネ施策を打つことが困難だったのです。

興人LS様にも選ばれた!
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社内ルールをクリアするセキュアな「閉域網xAWS」の実現


■社内ルールをクリアするセキュアな「閉域網xAWS」の実現

セキュリティの壁を突破できず模索を続けていたプロジェクトチームは、展示会においてコネクシオの提供するIoTゲートウェイおよびエッジデバイスソリューションに出会います 。

コネクシオが提案したソリューションの核心は、「インターネットを直接介さず、携帯キャリアの回線網を用いたセキュアな閉域網(TRIBE-biz VPN)を経由して、クラウド(AWS)へデータを直接アップロードする仕組み」でした 。

この構成であれば、工場のFAネットワークは外部のオープンなインターネット空間から完全に隔離されます 。社内の極めて厳しいセキュリティ要件(機密情報の漏洩防止、工程制御への影響遮断)を満たしつつ、同社が切望していた「クラウドを活用した先進的なデータプラットフォーム」を両立させることが可能となりました 。

■高い耐環境性と多様なインターフェースを持つ「CONEXIOBlackBear」

佐伯工場のような大規模な化学・バイオプラントでは、エッジデバイスが設置される環境も過酷です。コネクシオの提供するスマートファクトリー向けIoTゲートウェイ(CONEXIOBlackBearなど)は、耐環境性に優れているだけでなく、工場内で一般的に使われるPLC(プログラマブルロジックコントローラ)やDCS、各種計器類との豊富な接続インターフェースを標準で備えていました

さらに、通信SIMが内蔵されているため、現場での複雑な配線工事やネットワーク設定の手間を最小限に抑え、構築を大幅に容易化・迅速化できる点も大きな選定理由となりました

■将来の拡張性を見据えた「データの民主化」への親和性

コネクシオの提案は、単にデータをクラウドに上げるだけに留まりませんでした。AWS上に集約されたデータは、分析・可視化ツールである「Amazon Managed Grafana」と有機的に連携させることが可能です 。コネクシオは興人LS向けにツール操作レクチャーを実施し、専門のデータサイエンティストでなくても、現場の管理職やオペレーター自身が分析ダッシュボードを作成できるようにしました。これにより、ブラウザでリアルタイムにデータを参照・活用できる「データの民主化」の基盤を容易に構築できることが評価されました 。

レクチャー資料例レクチャー資料例

スモールサクセスを積み上げる段階的フェーズ展開


興人LSとコネクシオによるスマート工場化への取り組みは、確実な成果を出しながら領域を広げる「スモールサクセスの積み上げ(段階的フェーズ進行)」を基本戦略としました

【フェーズ1】徹底的な「見える化」と大規模センサーネットワークの構築

まずは、最大のターゲットである「ユーティリティコストの削減」に焦点を絞り、工場内のエネルギー消費の可視化からスタートしました

コネクシオのエッジソリューションを活用し、広大な工場敷地内に網の目のようにセンサーネットワークを構築 。無線通信技術(920MHz帯)を組み合わせることで、配線コストを抑えながら短期間で以下の多様なセンサー群を多数設置完了させました

  • 温湿度センサー
  • 熱水流量計
  • 蒸気流量計
  • 電力センサー
  • 電力フィーダ
  • DCSデータ連携

これらのセンサーから吸い上げられた毎分のデータは、IoTゲートウェイ経由でAWS上の「AWS IoT Core」へと集約され、「AWS Lambda」で分解・加工された後、「Amazon S3」に構築されたデータレイクへ自動的に蓄積される仕組みを確立しました

そして、集約されたリアルタイムデータを可視化する「ユーティリティダッシュボード(熱水・蒸気・電力)」をGrafana上に構築 。これにより、「現状どのエリアの、どのタンクでエネルギーが異常消費されているか」が一目でわかる環境(見える化レベル2)を実現したのです

フェーズ2, 3への取り組みも進んでいます。「作業日報・操業レポートの自動作成」などの業務効率化にもデータ活用を広げたいと考えており、また今後は予知保全への取り組みも推進していくとのことです。

IoT基盤システム構成 概要図

IoT基盤システム構成 概要図(再掲)

コスト削減と、投資抑制による莫大なメリット


具体的な【省エネ・コスト削減事例】は以下の通りです

効果①:薬液貯蔵タンクにおける無駄な熱水の削減
施策: ダッシュボードのリアルタイムモニタリングにより、特定の薬液貯蔵タンクにおいて、必要以上の熱水が継続的に供給されていることが発覚 。
成果: 運用条件の最適化により、熱水を削減することに成功 。
定性的・経営的効果:熱水製造にかかるエネルギーコスト削減

効果②:薬液加温用タンクにおける無駄な蒸気の削減
施策: 加温タンクの温度変化データと蒸気流量データを突き合わせて相関分析を行った結果、保温フェーズにおいてバルブの開度設定が過剰であり、熱量が無駄に逃げていたことが判明。
成果: オペレーションを見直すことで、蒸気(ボイラー燃料費に直結)を削減 。
定性的・経営的効果:ボイラー燃料消費の抑制、CO2排出量削減(SDGsへの貢献)

効果③:原料貯蔵タンクの撹拌機停止運用による電力削減 & 設備投資コストの抑制
施策: 原料貯蔵タンクの撹拌機について、データをモニタリングしながら、稼働停止運用の検証を実施 。データによる裏付けを得て、現在は撹拌機を完全に停止して運用 。
成果(1)ランニングコスト削減: これにより電力量を削減 。副次的効果としてモーター摩耗の低減。
成果(2)設備投資の抑制: さらに劇的な効果として、検証結果のオペレーションをそのまま新設計にフィードバックしたことで、「撹拌機自体の新規導入を不要」と判断。初期の設備投資コスト(CAPEX)を丸ごとカットすることに成功。

Grafanaを活用した見える化ダッシュボード例

AIエージェントとデジタルツインがもたらす
「未来が見える」スマート工場へ


興人LS佐伯工場が目指しているスマート化の到達点は、単なるデータの可視化や省エネの枠に留まりません 。同社は工場の見える化のレベルを、現在の「レベル2(状態が見える)」「レベル3(判定が見える)」から、最終段階である「レベル5(未来が見える自律制御モデル)」へと引き上げる青写真を描いています

  •  生産計画との連動: 現在は状況の「見える化」が中心だが、今後は生産計画データと連携させ、蒸気ボイラーなどのユーティリティ設備の「最適運転・自動制御」まで昇華させたい。
  • さらなるDX推進: RPA等のツールも活用しつつ、現場の各種業務プロセスの見直しと効率化を継続していく。

【まとめ】スマート工場化を目指す製造業の皆様へ

興人LSにおけるスマート工場化の成功事例は、強固なセキュリティルールが存在する製造業であっても、「適切なエッジソリューション(コネクシオのIoTゲートウェイ)」と「セキュアな閉域網」を組み合わせることで、安全かつ迅速にクラウド(AWS)の恩恵を100%享受できることを証明しています 。

単なる「時間短縮(手段の改善)」にとどまらず、「オペレーションの最適化(行為の目的=本質の向上)」へと突き進む同社の姿勢は、これからの日本の製造業が目指すべきDXの教科書と言えるでしょう 。

工場のデータ活用、制御ネットワークのセキュリティ確保、あるいはエネルギーコストの削減に課題を感じている企業の皆様は、ぜひ一度、コネクシオの「スマートIoTプラス プラント」をご検討ください。お客様の工場の歴史とルールを尊重しながら、未来のスマート化へ向けた最適なアーキテクチャを共創いたします。

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